こんにちは!「マンガ愛読者の部屋」管理人のAJIです。
2025年10月31日に山田裕貴さんや佐藤二朗さん出演で映画化される呉勝浩さんの小説『爆弾』、ものすごい話題になっていますよね。なんといっても「このミステリーがすごい!」で1位を獲得した作品ですし、期待値は高いです。
ただ、映画を見る前に「爆弾」の原作ネタバレが気になる…という方も多いんじゃないでしょうか。特に、スズキタゴサクの正体や真犯人は誰なのか、そして多くの人が口にする「結末が胸糞悪い」という評価の理由について、あらすじや動機も含めて知りたくなりますよね。
私も原作を読みましたが、これは…本当に衝撃的でした。この記事では、映画鑑賞前の予習として、また原作を読んだけれど整理したいという方のために、「爆弾」の核心的なネタバレ情報を徹底的に解説していきます。事件の真相を知った上で映画がどう描くのかを比べるのも、一つの楽しみ方かもしれません。
記事のポイント
- 事件の真犯人とスズキタゴサクの正体
- 衝撃的な事件のあらすじと5つの「爆弾」
- 原作の結末が「胸糞悪い」と評される本当の理由
- 映画版と原作の違いや続編『法廷占拠』の展開
ジャンプできる目次📖
爆弾の原作ネタバレ:犯人とあらすじ
まずは物語の核心、事件の真相についてです。一体誰が、なぜあの大規模な爆弾事件を引き起こしたのか。スズキタゴサクとは何者だったのか、その全貌に迫りますね。
真犯人は石川辰馬
いきなり結論から言いますが、この一連の連続爆破事件の真の計画者(真犯人)は、あの不気味な「スズキタゴサク」ではありません。
本当の犯人は、石川辰馬(いしかわ たつま)という青年です。
驚くことに、彼は物語の途中で、警察が踏み込んだシェアハウスで「遺体」として発見されます。つまり、物語が本格的に動き出す前に、真犯人はすでに死んでいるんです。
スズキタゴサクの正体と目的

では、あのスズキタゴサクは一体何者だったのか。
彼の正体は、石川辰馬の計画を横取りした「計画の乗っ取り犯(ハイジャッカー)」でした。
辰馬の母・明日香(後述します)から息子の恐ろしいテロ計画の全貌を聞いたタゴサクは、その瞬間、この計画を「自分のもの」にすることを決意します。辰馬が用意していた爆弾に加え、自分でも爆弾(秋葉原など)を仕掛けることで、事件を「スズキタゴサク自身の犯行」として偽装したんですね。
彼の戸籍や経歴は最後まで不明。彼は「スズキタゴサク」というありふれた名前を名乗る「誰でもない者」、まさに現代社会の“匿名”の化身だったんです。
真犯人、石川辰馬の動機
話を真犯人・石川辰馬に戻します。彼がなぜ、あのような無差別テロを計画したのか。その動機は、彼の父親にありました。
辰馬の父は、元刑事の長谷部有孔(はせべ ありかた)。彼は4年前、事件現場で「自慰行為」に及んでいたというスキャンダルを週刊誌に報じられ、それを苦に自殺していました。
このスキャンダルで一家は離散。辰馬の人生も完全に破壊されます。
彼の動機は、「自分の人生を破壊した世間(社会)を破壊する」こと。父を追い詰めたマスコミや、それを無責任に消費した世間全体への、無差別な復讐だったんです。
共犯者、石川明日香の絶望
この事件には、もう一人の重要な「共犯者」がいます。それは、辰馬の母・石川明日香(いしかわ あすか)です。
彼女は夫の死後、ホームレス状態にまで身を落としていました。そこで、息子である辰馬が恐ろしいテロ計画(爆弾製造)を進めていることを知ってしまいます。
絶望した明日香は、テロを止めるため(そして、これ以上娘に「テロリストの兄」という重荷を背負わせないため)、自らの手で息子の辰馬を刺殺します。
そして、動転した彼女が助けを求めて相談したのが、同じホームレス仲間だったスズキタゴサクだった…というわけです。これが、すべての計画が乗っ取られるキッカケでした。
もし明日香がタゴサクに相談していなければ、この未曾有の爆弾クイズ事件は起こらなかったのかもしれない…と思うと、本当にやるせない気持ちになりますね。
事件のあらすじと5つの爆弾
ここで、事件のあらすじ(流れ)を、タゴサクが仕掛けた「5つの爆弾」と共に整理しますね。
物語は、スズキタゴサクが酔って暴行事件を起こし、野方署に逮捕されるところから始まります。彼は取り調べ中に「霊感が働いた」と、秋葉原の爆発を予言。それを皮切りに、刑事たちへ爆弾の場所に関する「クイズ」を出し始めます。
1. 時限爆弾(物理)
秋葉原、東京ドーム、九段下など、物理的な時限爆弾で警察の捜査能力を試す「なぞなぞ」です。これはタゴサクが自分で追加した爆弾も含まれていました。
2. 命の選別トラップ(心理)
タゴサクはエリート刑事の清宮に対し、「子どもの施設」と「ホームレスの炊き出し」の2カ所に爆弾があると示唆。警察は「子どもの命」を優先し、結果的にホームレスが犠牲になります。タゴサクは清宮に「あなたは“命の選別”をした」と突きつけ、彼の心を破壊しました。
3. 遺体トラップ
タゴサクは警察をシェアハウス(辰馬のアジト)へ誘導。現場で矢吹巡査らが真犯人・石川辰馬の遺体を発見しますが、その遺体にはトラップが仕掛けられており、矢吹巡査が爆発で重傷を負います。
4. 動画(社会の分断)
物理的な爆弾ではなく「動画」による“爆弾”です。「浮浪者」「妊婦」「フェミニスト」など、ネットで対立を煽りやすい属性をターゲットに殺害予告を行います。そして「動画を面白半分で再生したお前たち(傍観者)のせいで次の爆弾が爆発する」と、責任を転嫁しました。
5. 環状線同時多発爆破
クライマックスです。環状線(原作では山手線)の複数の駅で、自動販売機に仕掛けられた爆弾が一斉に爆発する大規模テロでした。
爆弾の原作ネタバレ:結末と映画の違い
さて、ここからは物語のラスト、多くの読者が「胸糞悪い」と評する結末の真相と、2025年公開の映画版が原作とどう違う可能性があるのかについて考察していきますね。
結末が胸糞悪いと言われる理由
この物語の結末が「胸糞悪い」と言われる理由は、読者が期待するカタルシス(勧善懲悪)が一切ないどころか、悪意の構造そのものが「勝利」するからです。
環状線爆破の後、タゴサクは類家刑事に「最後の爆弾」の存在を匂わせます。類家は、それが石川明日香だと突き止め、彼女は警察署にリュックを持って現れます。
しかし、その爆弾は爆発しません。それは、類家がタゴサクの真の狙いを見抜き、その爆弾が起爆しない「フェイク」であることを見抜いていたからです。
タゴサクの真の狙いは、最後の爆弾を「爆発させないこと」でした。
もし爆発すれば事件は「完結」しますが、あえて「フェイク」を見せることで、警察と社会全体に「まだどこかに“本物”の爆弾が残っているかもしれない」という“終わらない恐怖”を植え付けたのです。
タゴサクは逮捕されますが、彼の目的(=社会に永遠の恐怖を植え付けること)は完璧に達成されてしまいました。
映画と原作の違いを比較
2025年10月公開の映画版が、この救いのない原作をどう映像化するのか、気になりますよね。
原作者の呉先生は、映画化にあたり「タゴサクをモンスターにしないこと」「地に足のついたキャラクターとして描くこと」を望んだそうです。一方、映画の宣伝文句は「超ド級のアクション」「高尚なエンターテイメント」となっています。
ここから推測すると、映画版は、原作の持つ最も病理的・性的な部分(例:タゴサクが憎悪に性的興奮を覚える描写や、辰馬の父・長谷部の倒錯した性衝動など)は、ある程度抑制される可能性が高いかなと思います。
映画は時間の制約もありますし、より「知能犯タゴサク vs 刑事たちの攻防戦」というスリラー要素にフォーカスするのではないでしょうか。
ただ、物語の根幹である「フェイクの爆弾」と「タゴサクの心理的勝利」という結末自体は、変更されない可能性が極めて高いと私は分析しています。あそこを変えてしまうと、『爆弾』という作品のテーマが崩れてしまいますからね。
主人公、類家刑事の危うさ
この物語、実質的な主人公は山田裕貴さん演じる類家(るいけ)刑事ですよね。彼はタゴサクの心理戦に唯一対抗できた人物ですが、実は彼も「まとも」ではありません。
類家とタゴサクの最大の共通点は、「サイコパスじみた知性」です。
- タゴサクは「話術」で人の内面を(共感なく)支配する。
- 類家は「推理」で人の内面を(共感なく)分析する。
二人は「表裏一体」なんです。タゴサクが他の刑事を名前で呼ぶのに、類家だけを最後まで「刑事さん」と呼び続けたのは、自分と同種の知性に対するタゴサクなりの「敬意」だったと考察されています。
等々力刑事が気に入られた理由
染谷将太さん演じる等々力(とどろき)刑事は、タゴサクが逮捕されて最初に取り調べ、一時「彼としか話さない」と指名するほど「気に入られ」ますよね。この理由、実は二重の意味でタゴサクの狡猾さを示しています。
一つは、類家刑事が分析した「交渉術」としての側面です。タゴサクは、録音設備が整った「取調室」という舞台を確保し続けるため、あえて最初に担当した、人の良さそうな等々力を「交渉カード」として選んだ、という戦術的な理由ですね。
しかし、もっと本質的なのは心理的な理由です。
等々力は、真犯人・石川辰馬の父である長谷部元刑事が自殺する遠因を作ってしまった、という強烈な罪悪感(トラウマ)を抱えていました。彼が精神的に不安定だった長谷部を精神科クリニックに紹介し、その情報が(恐らく等々力経由で)マスコミにリークされた結果、長谷部はスキャンダル報道で自殺に追い込まれた…と彼は後悔し続けていたんです。
タゴサクは、その「人生を諦めたような雰囲気」や「重い過去を背負った弱さ」を一瞬で見抜きました。
他の刑事たちをタゴサクは「壊す」対象として見ていました。
- 清宮(エリート):「正義」や「道徳」を試し、「命の選別」をさせて心を折る。
- 倖田(感情):「憎悪」を煽り、その剥き出しの感情を「興奮」の糧として消費する。
- 類家(知性):唯一、自分と対等な「ゲーム」ができる相手として認識する。
しかし等々力は、最初から「壊れて」いるというか、「諦め」をまとっていました。タゴサクにとって、それは「壊しがいのある玩具」ではなく、自分と同じ「社会」や「正義」のレールから外れた存在としての「親近感」を覚える対象だったのかもしれません。だからこそ、ゲームの序盤の「話し相手」として「気に入った」んですね。
続編『法廷占拠』タゴサクのその後
「あの後、スズキタゴサクはどうなったの?」という最大の疑問。これ、実は正統な続編『法廷占拠 爆弾2』(2024年刊行)でハッキリと描かれています。
『爆弾』の衝撃的な結末から約1年後。スズキタゴサクは、もちろん逮捕・起訴され、東京地方裁判所の法廷で被告人として裁判を受けています。司法の裁きは、ちゃんと受けていたんですね。
しかし、物語はそこで終わりません。
タゴサクが法廷の証言台で、相も変わらず弁護士すら煙に巻くような詭弁を弄している、まさにその最中。突如、傍聴人の一人が銃を発砲し、法廷を占拠するという前代未聞の事件が発生します。
占拠犯の要求は「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放する」というもの。タゴサクは、今度は「事件の首謀者」ではなく、人質の一人として「新たな悪意」の事件に巻き込まれていきます。
爆弾の原作ネタバレはシーモアで
ここまで、呉勝浩さんの『爆弾』について、犯人や結末、タゴサクの正体など、核心的なネタバレを徹底的に解説してきました。
解説を読んだだけでも、その異常な熱量と「胸糞悪い」と評される理由の一端は伝わったかもしれません。ですが、この物語の真の恐ろしさ、特にスズキタゴサクの不気味な話術や、刑事たちがじわじわと精神を破壊されていく過程は、やはり原作小説でしか味わえないものがあります。
映画の予習・復習で原作小説を読みたくなった方には、電子書籍が手軽でオススメです。
特に「コミックシーモア」なら、本の充実はもちろん、お得なクーポンやポイント還元も多いので、賢く読めちゃいますよ。
映画を見る前に、あの「終わらない恐怖」の原点を、ぜひご自身で体験してみてください。




