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チ。最終回はひどい?賛否両論の最終章までの結末を考察

チ。最終回はひどい?賛否両論の最終章までの結末を考察

チ。―地球の運動について― (1) (BIG SPIRITS COMICS)

今回は、魚豊先生の衝撃作『チ。―地球の運動について―』の最終回について、深く掘り下げていきたいと思います。「チ 最終回 ひどい」と検索してここにたどり着いた方は、きっとあの結末に心を揺さぶられ、もしかしたら「救いがない」と感じたり、物語の終わり方に戸惑ったりしているんじゃないかなと思います。

オクジーやヨレンタ、そして彼らと対峙したノヴァクといった、信念を持つ登場人物たちの壮絶な生き様を見届けた後だからこそ、あの結末は「エピローグ不足」なんじゃないか、と感じてしまいますよね。あるいは、最後の最後に出てきた「ラファウ」は一体誰なのか、物語が「難解」だと感じて、モヤモヤしているかもしれません。

正直、私も初めて読んだ時は、感情が追いつかずにしばらく呆然としてしまいました。

この記事では、なぜ最終回が「ひどい」とまで言われてしまうのか、その賛否両論の理由やポイントを、私なりにじっくりと整理・考察していきます。あの結末が持つ本当の意味について、一緒に考えていけたら嬉しいです。

記事のポイント

  • 最終回が「ひどい」「救いがない」と言われる理由
  • 主要人物(オクジー、ヨレンタ、ノヴァク)の壮絶な最期
  • 最終章に登場する「ラファウ」は誰なのかという謎
  • 賛否両論の結末に込められた本当のテーマ
著:魚豊
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チ 最終回 ひどいと評される賛否両論の背景

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まずは、なぜ『チ。』の最終回が「ひどい」という強い言葉で評されてしまうのか。その具体的な理由と、読者が抱いた感情の背景にあるものを、詳しく見ていきましょう。これは、多くの読者が期待していたであろう「物語のセオリー」と、実際に描かれた「現実の厳しさ」との間に、大きなギャップがあったからだと私は思います。

「ひどい」評価と救いがない展開

この作品に「ひどい」とか「救いがない」という感想が真っ先に出てしまうのは、やはり、登場人物たちのあまりにも報われない最期に尽きるかなと思います。

物語は、地動説という「知」に魅せられ、その真理のために命を懸けた人々のリレー形式で進んでいきます。しかし、そのバトンを渡すランナーたちが、文字通り次々と、非常に残酷な形でリタイアしていくんですよね。

  • 第1章の主人公ラファウは、自らの好奇心を貫き通すため、そして「知性」という敵の存在をノヴァクに刻み込むため、服毒自殺を選びます。
  • 第2章の主人公オクジーと協力者バデーニは、命がけで研究を完成させたにも関わらず、捕らえられ、無情にも絞首刑に処されます。
  • 第3章の中心人物ヨレンタは、仲間と「知」を拡散するための印刷機を守るため、自らを犠牲にして爆死を選びます。
aji
aji
読者としては、あれだけ苦しみ、抗い、頑張ったんだから、誰か一人くらいは報われてほしかった…! せめて、自分の研究が認められる未来を少しでも感じながら最期を迎えてほしかった…!って思うのが、ごく自然な感情ですよね。

でも、この物語はそうした「フィクション的なご褒美」や「読者へのサービス」を、意図的に、かつ徹底的に排除しているように感じます。その容赦のない展開が、「残酷すぎる」「救いがなさすぎる」というストレートな拒否反応、つまり「ひどい」という評価に直結しているんだと思います。

構成への不満「エピローグ不足」とは

もう一つの大きな理由が、物語の「終わり方」そのものに対する不満、いわゆる「唐突な」終焉と「エピローグ不足」だと感じる点ですね。

物語の最初から最後まで、異端審問官として「知」を弾圧する側に立ち続けた最大の敵役、ノヴァク。彼の死によって、P国を舞台にした地動説弾圧の物語は、実質的なクライマックスを迎えます。

多くの読者は「これで一つの時代が終わった」と感じ、その「その後」を期待したはずです。

読者が期待した「エピローグ」とは

例えば、以下のような内容を期待していたのではないでしょうか。

  • 生き残った(かもしれない)ドゥラカたちのその後。
  • 彼らの犠牲が、具体的に後世にどう影響したのか。
  • P国という社会が、ノヴァクの死後にどう変わっていったのか。

しかし、物語はそうした「まとめ」を一切描かず、急に「ラファウ」を名乗る青年が登場する、時系列も舞台も違うかのような最終章が始まります。そして、そのまま完結してしまう。

この構成は、生き残った人物たちの「その後」や、犠牲の「具体的な成果」というエピローグを期待していた読者にとって、「え、ここで終わり?」「あの人たちはどうなったの?」という強烈な消化不良感を与えてしまいました。この「説明不足」「突然終わった」という印象もまた、「ひどい」という評価の一因になっているのは間違いないですね。

オクジーとバデーニの報われない最期

特に「救いがない」という印象を強く植え付けたのが、第2章のオクジーとバデーニの最期だったと私は思っています。

オクジーの純粋な探求心と、それを支えるバデーニの温かさ。二人が対話しながら真理に近づいていく姿は、この過酷な物語の中でのオアシスのようでした。せっかく地動説の研究を一つの「手記」として完成させたのに、密告によって二人は捕らえられてしまいます。

そして、ここからが本当に辛い。

バデーニは、目の前でオクジーが拷問される姿に耐えきれず、「人間的な弱さ」から資料の隠し場所を自白してしまいます。彼らを責めることなんて、誰にもできませんよね…。

絶望の中の、一筋の光

結果として、二人は絞首刑に処されてしまいます。個人の物語としては、これ以上ないほどの絶望的な結末です。

しかし、物語はここで終わらせません。バデーニは捕まる前に、万が一の事態に備えて協力者を募り、オクジーが記した「地動説に関する手記」を復元するよう手配していました。

彼ら個人の命は失われ、報われることはありませんでしたが、彼らの「知」は、ここで「手記」という形で確かに未来へと繋がったのです。

逃亡したヨレンタの結末と自爆の理由

オクジーたちと共に異端疑惑をかけられ、処刑をなんとか逃亡したヨレンタ。彼女は、第1章のラファウが再発見し、第2章のオクジーたちが理論化した「知」を、次のステージに進める役割を担います。

表向きは処刑された扱いとなり、実の父親であるノヴァクは娘が死んだと思い込み、悲しみに暮れる…というのも、なんとも皮肉な展開ですが…。

その後、ヨレンタは「異端解放戦線」のリーダーとなり、地動説の書物を「活版印刷機」で大量生産することで、「知」の増殖を試みます。

aji
aji
オクジーの「手記(一点モノの記録)」から、ヨレンタの「印刷(大量生産と拡散)」へ。ここで「知」の継承が質的にも量的にもスケールアップしているのが、本当に熱い展開ですよね!

彼女はもう、オクジーたちのように「知」を隠すのではなく、「拡散」させることで守ろうとしました。しかし、その「知の増殖拠点」である印刷所も、当然ながら敵の標的となります。

最終的に、ヨレンタは印刷所と仲間たちを追手から守るため、自ら囮(おとり)となり、「これが私の“チ”だ」と叫びながら爆死を選びます。これもまた、個人の救いという点では、あまりにも切なく、壮絶な最期でした。

悪役ノヴァクの絶望と皮肉な最期

物語を通して「知」を弾圧する「悪役」であり、「壁」として立ちはだかった異端審問官ノヴァク。彼の最期は、この物語の中で最も皮肉で、ある意味最も悲劇的だったかもしれません。

彼は単なる悪ではなく、「神の秩序(天動説)を守る」という彼自身の「正義」を、誰よりも強く盲信していた人物でした。

自身の正義の崩壊

しかし、物語の終盤、彼はアントニ司教から衝撃の真実を告げられます。そもそも地動説は異端ではなかったこと、すべては司教の父の個人的な恨みから始まった弾圧であり、ノヴァクはそれに都合よく利用されていただけだった、と。

自らの正義と、そのために捧げてきた人生のすべてを否定され、ノヴァクは絶望します。そして、自分を裏切った司教を殺害してしまいます。

最愛の娘との最悪の再会

司教を殺害した直後、第3章の主人公ドゥラカに刺され、致命傷を負うノヴァク。死の間際、彼はヨレンタの自爆を目撃します。そして、吹き飛んできた遺体の一部(腕)などから、自分が追い詰め、殺害(の間接的な原因)となった異端解放戦線のリーダーが、死んだと思っていた実の娘ヨレンタであったと悟るのです。

信じていた正義は嘘で、そのために実の娘を殺してしまった。「知」の弾圧者であったノヴァクは、最期に自ら教会に火を放ち、炎の中で焼死します。

彼には後継者が現れず、彼の「正義」は彼一代で途絶えました。これもまた、一つの「報い」の形だったのかもしれません。

【一覧】主要人物の結末と「知」の継承まとめ

ここで、P国編の主要人物たちが、どのように「知」の継承に関わったのかを一覧表で整理してみましょう。

人物名 最終的な結末(死因) 「知」の継承における役割
第1章 ラファウ 服毒自殺。遺体は焼却。 「知」の再発見。ノヴァクに「知性」という敵を認識させる。
第2章 オクジー 絞首刑。 地動説の理論を「手記」として完成させる。
第2章 バデーニ 絞首刑。 オクジーの手記の「復元」を手配し、未来へ繋ぐ。
第3章 ヨレンタ 自爆死。 「活版印刷機」による「知の大量生産」を守るために犠牲となる。
第3章 ドゥラカ 死亡(詳細不明)。 ヨレンタの意志を託され、一時的に脱出に成功する。
1〜3章 ノヴァク(敵役) 絶望し、自ら教会に放火して焼死。 「知」の弾圧者。しかし最後は自らの正義が嘘であったことを知り破滅する。

チ 最終回 ひどいは本当か?結末の徹底考察

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ここまで、「ひどい」「救いがない」と言われる側面を詳しく見てきました。たしかに、個々のキャラクターの人生に焦点を当てると、これ以上ない悲劇の連続です。しかし、この最終回を「素晴らしい」「これ以上の終わり方はない」と絶賛する声も、同じくらい(あるいはそれ以上に)多いんです。

ここからは視点を変えて、なぜこの結末が肯定的に評価されるのか、その「難解」とされる部分に隠された作品の真のテーマについて、徹底的に考察していきたいと思います。

最終章のラファウは誰か?最大の謎

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最終回が「ひどい」「唐突」と感じられる最大の混乱ポイントが、これですよね。第1章で死亡したはずのラファウが、最終章で再登場すること。

私も最初は「えっ!?」と声が出ました。この再登場には、どう考えても説明がつかない矛盾点が存在します。

  • 死亡の事実: 第1章のラファウはノヴァクの目の前で服毒自殺し、その遺体はノヴァクによって焼却されています。生存や死の偽装は不可能です。
  • 経過時間: 第2章はラファウの死から10年後、第3章はさらにその25年後です。つまり、ノヴァクやヨレンタが死亡した時点で、ラファウの死から35年以上が経過しています。
  • 外見の矛盾: もしラファウが生きていたとしても、最低でも47歳以上のはずですが、最終章に登場するラファウは明らかに「青年」として描かれています。
aji
aji
「生きてたの!?」とか「死を偽装してた?」とか、一瞬パニックになりますけど、時系列を考えたら絶対にありえないんですよね。じゃあ、この青年は一体誰なんだ…?と。

ラファウ再登場とパラレルワールド説

これらの明らかな矛盾から、最終章に登場する青年ラファウは、第1章のラファウとは別人、あるいはパラレルワールド(別世界線)の存在であると考察するのが最も自然です。

根拠:舞台の変化(P国からポーランド王国へ)

その最大の根拠は、物語の舞台がそれまでの架空の「P国」から、実在の「ポーランド王国」へと明確に変更されている点です。

これは、物語の「仕掛け」として非常に重要だと私は思います。

考察:二つの世界の対比

つまり、こういうことではないでしょうか。

  1. P国(架空の世界線):「知」が徹底的に弾圧され、ラファウやオクジー、ヨレンタたちが無残に死んでいく、「ひどい」世界。
  2. ポーランド王国(現実の世界線):P国での無数の犠牲(IF)があったからこそ、「知」が受け入れられ、花開く準備が整った、現実の歴史に繋がる世界。

P国という架空の舞台で「知」のために死んでいった無数の人々(ラファウ、オクジー、ヨレンタ達)の犠牲が、「ポーランド王国」という現実の舞台で、新たな「ラファウ」(=知の好奇心を持った青年)に結実する…という、壮大な構成的「仕掛け」を示唆しているんです。

読者が「ひどい」と感じたP国での悲劇があったからこそ、現実の「ポーランド王国」での「知」の勝利に繋がる。そういう時空を超えた因果関係を描いているのだと、私は解釈しています。

「唐突」な終わり方と真の主人公

「ひどい」派の意見では「唐突な終わり方」とされましたが、この視点に立つと、あの終わり方こそが「必然」であったことがわかります。なぜなら、この物語の真の主人公が「個人」ではなかったからです。

第1章でラファウは、ノヴァクにこう言い放ちます。

お前らが相手にしてるのは 俺でも異端でもない 知性だ

また彼は、好奇心や知性を「流行り病のように増殖する」ものだと語ります。このセリフこそが、作品全体を貫く最大のテーマだと私は思います。

「チ」が意味するもの

この物語の主人公は、ラファウやオクジーといった特定の個人ではなく、彼らの好奇心や「知りたいという欲求」そのもの、すなわち「知(チ)」なんです。

タイトルである『チ。』が、何を意味しているのか。

  • 「知(チ)」:知性、好奇心
  • 「血(チ)」:人間に宿る生命、継承されるもの
  • 「地(チ)」:地球、大地

増殖した“知(チ)”が、“血(チ)”肉(=人間)に宿り、“地(チ)”球の真理を明らかにしていく…。

補足

この視点に立つと、物語の構造が全く異なって見えてきます。

個々の人間(ラファウ、オクジー、ヨレンタ)は、「知」という“流行り病”に感染した「宿主(やどぬし)」、あるいは「バトンランナー」に過ぎません。

宿主が死んでも、「知」そのものは死なない。次の宿主へと、あるいは「手記」や「印刷技術」といった次の形態へと姿を変えて、受け継がれていきます。

したがって、キャラクターたちの「報われない死」は、個人の悲劇であると同時に、「知」が次の継承者や次の形態へとバトンを渡すための、壮大なリレーにおける「プロセス」として描かれているのです。

結末が「難解」とされる理由

結局のところ、この結末が「難解」とされたり、「ひどい」と感じられたりするのは、私たち読者が、無意識に「物語」というフィクションに対して「個人の救い」を期待してしまうからだと思います。

みんなの声
みんなの声
「感情移入したキャラクターには幸せになってほしい」
「あれだけ頑張ったんだから、努力は報われてほしい」

これは、物語を読む上でごく自然な感情です。しかし『チ。』は、その「個人の救い」という読者の期待を、あえて裏切ります。そして、代わりに「知の継承」という、もっと大きなスケールのテーマを描ききろうとしました。

aji
aji
この、読者が求めるもの(個人の感情的な満足)と、作品が描いたもの(テーマの完遂)との間に生まれた「ズレ」こそが、賛否両論と「難解さ」を生んでいる最大の理由だと感じますね。

歴史に繋がる「知」の継承

そして、「ひどい」という評価を覆す、肯定派にとって最大の感動ポイントが、この「知の継承」というバトンリレーが、フィクションの枠を超えて、私たち読者が知る「現実の歴史」へと接続される点にあります。

最終回、最終ページ。ポーランド王国で「ラファウ」と出会った人物が、彼に問います。

「君の名は?」

そして、青年に促されて、彼が自分の名前を口にするシーンで、物語は幕を閉じます。その歴史上の人物の名前は、「コペルニクス」です。

aji
aji
うわああああ!って、鳥肌が立ちましたよね、ここは! そうか、そう繋がるのか!と。

P国という架空の舞台で、報われることなく死んでいったラファウ、オクジー、バデーニ、ヨレンタ、ドゥラカ…そして名もなき無数の人々の犠牲。そのすべてが、決して無駄ではなく、現実の歴史における地動説の確立者であるコペルニクスへと、確かに「バトンが渡された」んだ、ということが示唆されるのです。

個々のキャラクターの救済をあえて排除したからこそ、「すべてが繋がった」という、とてつもなく大きなスケールでの感動が生まれる。これが、この結末が「素晴らしい」と高く評価される最大の理由ですね。

まとめ:「チ 最終回 ひどい」の真相

さて、『チ。―地球の運動について―』の最終回について、私なりに深く考察してきました。

結論として、最終回を「ひどい」「救いがない」と感じることは、決して間違った感想ではありません。それは、作者が意図的に「フィクション的なご褒美」を排除し、ラファウやオクジーたち魅力的なキャラクターに、あまりにも容赦のない結末を与えたからこそ生じる、ごく自然な感情的反応です。

しかし、本作の真の主人公は彼ら個人ではなく、彼らの「血」に宿った「知」そのものでした。

キャラクターたちの「報われない死」は、その「知」が「流行り病のように増殖」し、手記や印刷機といった形態進化を経て、最終的にコペルニクスという「現実の歴史」へとバトンを渡すための、壮大なリレーにおける「尊い犠牲」として描かれています。

「ひどい」と感じるほどの個人の絶望と、「素晴らしい」と感じるほどの「知」の継承。

その両極端な感情を同時に、かつ強烈に体験させることこそが、『チ。―地球の運動について―』という、マンガ史に残る傑作の到達点であると、私は思います。

あの衝撃的な結末をもう一度読み返したくなった方や、まだこの壮大な物語を体験していない方は、ぜひコミックスで一気読みすることをおすすめします。特に電子書籍なら、場所を取らずに全巻揃えることができますよ。

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AJI

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