2018年7月5日、フジテレビ系のノイタミナ枠で『BANANA FISH』のアニメが始まりました。原作の連載開始は1985年ですから、33年越しの映像化です。ところが放送が進むにつれて、原作を読んできた人たちのあいだから戸惑いの声が上がりました。作画が荒れたわけでも、話が途中で終わったわけでもありません。引っかかりの中心にあったのは、物語の舞台となる時代そのものが動かされていた、という一点でした。ここでは何がどう変わったのかを、確認できた事実だけで見ていきます。逆に、確認できていないことは確認できていないと正直に書きますね。
記事のポイント
- アニメは2018年放送・全24話で原作本編を完結まで描いている
- 最大の違いは舞台の時代設定が1980年代から現代へ移されたこと
- 時代を動かした意図についての公式な説明は確認できていない
- 原作19巻巻末の後日談『光の庭』はアニメに含まれていない
BANANA FISHのアニメがひどいと言われる理由|原作との最大の違いは時代設定
まずは、どんな声が出ているのかを並べたうえで、そのうち何が事実として確認できて、何が確認できないのかを分けていきます。そのあとで放送データと制作体制、そして核心にあたる時代設定の変更、後日談の扱いへと順番に降りていきますね。

「ひどい」と言われている中身を先に整理する
ひとくちに評判が割れていると言っても、その中身はばらばらです。作画への不満なのか、話の筋が変わったことへの不満なのか、あるいは原作の空気が薄まったという感覚なのか。ここを混ぜたまま語ると、答えのない言い合いにしかなりません。
そこで、よく見かける声を並べ、当サイトが公式サイトや出版社の資料で裏を取れたものと、取れなかったものに分けました。
| よく言われること | 確認できた事実 | 扱い |
|---|---|---|
| 舞台が現代になっている | 1980年代(ベトナム戦争後)からイラク戦争後の2018年前後へ変更され、スマートフォンなど現代の道具が登場する | 事実 |
| 時代を変えた理由が納得できない | 制作側による意図の説明は、公式サイトなどの一次情報では確認できなかった | 未確認 |
| エピソードが削られている | 公式が示したカット・改変の一覧は確認できなかった | 未確認 |
| 結末が原作と変えられている | 全24話で原作本編(全19巻)を完結まで描いている | 事実 |
| 後日談が描かれていない | 原作19巻の巻末に収められた後日談『光の庭』は、2018年放送の全24話には含まれていない | 事実 |
こうして並べると、輪郭がだいぶはっきりしてきます。確実に言えるのは「時代が動いた」ことと「後日談が入っていない」ことの2つ。逆に、エピソード単位でどこが削られたという話は、当サイトが調べた範囲では公式の裏付けに届きませんでした。ネット上には具体的な改変リストらしきものも出回っていますが、出どころをたどれないものを事実として書くわけにはいきません。
ちなみに、原作つきのアニメで受け止めがずれる現象は珍しくないんですよね。同じくフジテレビ系ノイタミナ枠で放送された作品については、銀の匙のアニメへの評価でも似た構図に触れています。
BANANA FISHのアニメの基本データ
評価の話に入る前に、土台となる数字を押さえておきます。いつ、誰が、どれだけの尺で作ったのか。ここが曖昧だと、その先の議論も宙に浮いてしまいますから。

放送時期と制作体制
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放送期間 | 2018年7月5日〜同年12月20日 |
| 放送枠 | フジテレビ系「ノイタミナ」/毎週木曜24:55〜 |
| 話数 | 全24話(2クール構成) |
| アニメーション制作 | MAPPA |
| 企画・音楽制作 | アニプレックス |
| 監督 | 内海紘子 |
| シリーズ構成 | 瀬古浩司 |
| キャラクターデザイン | 林明美 |
スタッフの並びは公式サイトのSTAFF/CASTページで確認できます。アニメーション制作はMAPPA、監督は内海紘子さん、シリーズ構成は瀬古浩司さん、キャラクターデザインは林明美さん。企画・音楽制作にはアニプレックスが入っています。
なお、公式サイト上には「1期」「2期」といった独立した区分の表記は見当たりませんでした。前半クール・後半クールをまとめて1シリーズと数えるのが妥当なところでしょう。
全24話で原作本編を完結まで描いている
この見出しから先には、物語の着地に触れる記述が含まれます。まだ本編を読んでいない・見ていない方はご注意ください。
ここは意外と誤解されている点かもしれません。アニメは全24話で、原作本編にあたる全19巻を最後まで描いています。途中で終わって続きは原作で、という作りではないんですね。
つまり、結末そのものを別のものに差し替えたという話ではありません。物語がどこへ向かい、どう閉じるのかという骨格は、原作からそのまま持ち込まれています。「ひどい」と語られるときの争点は、終わり方の変更ではなく、そこに至るまでの土台の置き換えのほうにあります。
アニメの空気感は、公式が公開しているPVで確認できます。
舞台が1980年代から現代へ変更された
さて、本題です。原作の『BANANA FISH』は、1985年から1994年にかけて小学館『別冊少女コミック』で連載されました。物語が立っている地面は、当然その時代のアメリカです。
一方、2018年のアニメでは、この地面が動かされています。ベトナム戦争後の1980年代という設定から、イラク戦争後の2018年前後へ。登場人物はスマートフォンを手にし、街の風景も放送当時のニューヨークに寄せられました。原作を読んできた人がまず面食らったのは、ここです。
時代設定が変わると何が変わるのか
「背景が新しくなっただけでしょう」と思われるかもしれません。けれど、この作品にかぎってはそう簡単な話にならないんですよ。
原作でこの物語の背後に置かれていたのは、ベトナム戦争です。戦地から帰ってきた人間が抱えた傷という前提が、少年たちの置かれた状況とつながっていました。1980年代のアメリカという時代そのものが、物語の重さを支える一部になっていたわけです。
そこを現代に移すと、背後にある戦争はイラク戦争へ置き換わります。時代が違えば、社会の空気も、街の危険の質も同じではありません。同じ筋書きでも、その筋書きが成り立つ土台の部分が入れ替わる——原作読者の違和感の正体は、たぶんここにあります。
さらに実務的な問題もあります。携帯電話が全員の手の中にある世界では、連絡が取れない・居場所が分からないという状況の作り方が変わってきます。原作で緊張を生んでいた「すれ違い」の何割かは、道具の進歩によって成立しにくくなる。それでも物語を通すためには、どこかで調整が必要になるはずです。
変更の意図についてわかっていること
では、なぜ時代を動かしたのか。ここが一番知りたいところだと思うのですが、正直に書きます。
制作側が意図を説明した一次情報は、当サイトのリサーチでは確認できませんでした。 公式サイトにもそうした記述は見当たらず、プロデューサーの発言とされる文章はいくつか見つかったものの、出どころをたどると考察系のブログに行き着いてしまい、元になった記事を特定できていません。
ネット上には「原作の時代のままでは若い視聴者に届かないから」といった説明がいくつも流通しています。もっともらしくはあります。ただ、当サイトはそれを事実として書きません。裏付けのない理由を並べることは、読者に対して不誠実ですから。
言えるのは、次の2点だけです。時代設定が変更されたという事実。そして、その理由について公式の説明を見つけられなかったという事実。もし今後、制作陣のインタビューなどが確認できたら、この記事も書き足しますね。作品の情報はTVアニメ『BANANA FISH』公式サイトでも確認できます。
後日談『光の庭』がアニメに含まれていない
もうひとつ、はっきりしている差があります。原作19巻の巻末には『光の庭』という後日談が収められているのですが、これが2018年放送の全24話には入っていません。
本編の結末を見届けたあと、この後日談を読むかどうかで、作品全体の残り方はかなり変わってきます。アニメだけを見た人は、その部分に触れないまま物語を閉じたことになるわけです。エンディング等での言及も、確認できた範囲では見当たりませんでした。
アニメを見終えて胸に穴が空いたような感覚が残った方は少なくないと思います。その穴に対して、原作にはもう少しだけ続きが用意されている。これはアニメの欠点というより、原作を手に取る理由と捉えたほうが、たぶん健全ですね。
BANANA FISHのアニメと原作漫画の考察|『光の庭』まで読むということ
ここからは、アニメを見終えた人が原作でどんな体験を追加できるのかという視点で見ていきます。巻数の数え方でつまずきやすい点、原作でしか触れられない部分、そして読む手段まで。最後によくある質問と、この記事のまとめを置きますね。

原作は全19巻で完結している
まず巻数の話から。ここは調べると数字が食い違って見えるので、先に整理しておきます。
小学館の公式コミックページで確認できるとおり、本編は全19巻で完結しています。1985年から1994年まで『別冊少女コミック』で連載され、きちんと最後まで描き切られた作品です。
ただし電子書籍では「1〜20巻」と表示される場合があります。これは1995年に刊行された番外編集『PRIVATE OPINION』の復刻収録分が20巻目として配信されているためで、本編が20巻あるわけではありません。番外編は本編とは別のものだと、小学館の電子書籍ストア側でも明記されています。混乱しやすいところなので、覚えておくと買うときに迷わずに済みます。
また、小学館文庫版は全11巻で完結しています。レーベルが違えば区切り方も違う、というだけの話ですが、冊数だけ見ると別作品のように思えてしまいますよね。
| 版 | 巻数 | 備考 |
|---|---|---|
| フラワーコミックス(本編) | 全19巻 | 19巻の巻末に後日談『光の庭』を収録 |
| 電子書籍 | 1〜20巻 | 20巻は番外編集『PRIVATE OPINION』の復刻収録分 |
| 小学館文庫版 | 全11巻 | 別レーベルでの再編集版 |
アニメを見終えた人が原作で得られるもの
「本編は全部アニメでやったのなら、原作を読む意味はあるの?」と思う方もいるでしょう。私の答えははっきりしています。あります。
ひとつは、さっき触れた『光の庭』です。19巻の巻末にある後日談で、アニメには含まれていません。本編を見届けた人だけが受け取れる部分が、紙のほうにはまだ残っているわけです。
もうひとつは、1980年代という時代の中に置かれた物語をそのまま浴びられること。アニメで現代に翻訳された構造を知ったうえで原作を開くと、「ここが元はこうだったのか」という発見が続きます。翻訳前と翻訳後を両方知ることになるので、むしろアニメを先に見た人のほうが、この読み比べを楽しめるかもしれません。
そして、吉田秋生さんの線そのものを見る楽しみ。1985年から1994年という10年近い連載ですから、読み進めるうちに絵の印象が移っていくのも紙ならではです。アニメーションの動きとはまったく別種の迫り方をしてくるので、同じ場面でも受け取るものが変わってきますよ。
いま原作を読むなら
19巻という分量は、紙で揃えるとなかなかの決断になります。置き場所の問題もありますし、古い作品なので書店の棚で全巻そろっているとはかぎりません。その点、電子書籍なら在庫を気にせず一気に読み進められます。
コミックシーモアでは本作が配信されていて、無料の立ち読みだけなら会員登録もいりません。まずは1巻の冒頭を開いてみて、絵の雰囲気が合うかどうかを確かめるのが手堅い入り方かなと思います。
紙で読みたい方は、フラワーコミックス版の1巻をAmazonで確認できます。文庫版という選択肢もあるので、置き場所と予算に合わせて選んでください。
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BANANA FISHのアニメに関するよくある質問(FAQ)
Q1. アニメは原作のどこまで描いていますか?
A. 全24話で原作本編(全19巻)を完結まで描いています。途中で終わる作りではありません。ただし、19巻の巻末に収録された後日談『光の庭』はアニメに含まれていないため、そこだけは原作でしか読めない部分になります。
Q2. アニメと原作でいちばん大きな違いは何ですか?
A. 舞台となる時代設定です。原作はベトナム戦争後の1980年代を舞台にしていますが、アニメではイラク戦争後の2018年前後へ移されており、スマートフォンなど現代の道具も登場します。物語の結末そのものが差し替えられているわけではありません。
Q3. なぜ舞台が現代に変更されたのですか?
A. 変更されたこと自体は確認できますが、その意図を制作側が説明した一次情報は、当サイトのリサーチでは確認できませんでした。理由を説明しているように見える文章はネット上にありますが、出どころをたどれなかったため、この記事では断定を避けています。正確な情報は公式サイトをご確認ください。
Q4. アニメでカットされたエピソードはありますか?
A. 公式が示したカット・改変の一覧は確認できませんでした。個別のエピソードについて「削られた」と断定できる根拠を当サイトでは持っていないため、ここでは書きません。気になる場合は、ご自身でアニメと原作を並べて読み比べるのが確実です。
Q5. 原作は何巻まで出ていますか?
A. 本編は全19巻で完結しています。ただし電子書籍では、番外編集『PRIVATE OPINION』の復刻収録分を加えて「1〜20巻」と表示される場合があります。小学館文庫版は全11巻です。
まとめ:BANANA FISHのアニメをどう見るか
ここまで見てきたとおり、BANANA FISHのアニメについて確実に言えることは多くありません。舞台の時代が1980年代から現代へ動かされたこと。全24話で原作本編を完結まで描いたこと。後日談『光の庭』が含まれていないこと。事実として押さえられるのは、おおむねこの3つです。
時代設定の変更は、この作品にとって背景の入れ替え以上の意味を持ちます。物語を成り立たせていた土台に手を入れた以上、違和感を覚える人が出るのは自然なこと。一方で、その変更があったからこそ届いた層もいるはずです。どちらの受け止めも否定される筋合いはないと思っています。
ただ、変更の理由については公式の説明が見つかりませんでした。だから私も断定しません。分からないことを分からないまま置いておくのは、少し落ち着かないものですけれど、それが誠実な書き方だと考えています。
アニメを見終えて何かが残っている方には、やっぱり原作をおすすめしたいです。19巻の最後には、アニメが触れなかった時間が待っています。なお、配信状況や刊行情報は変わることがありますので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。