七つの大罪の名を与えられた人ならざる者たち——それが『鋼の錬金術師』のホムンクルスです。プライド、ラスト、グラトニー、エンヴィー、グリード、ラース、スロウス。名前は聞いたことがあっても、誰がどんな能力を持ち、どんな最期を迎えたのかまでは意外とあいまいなまま、という方は多いはず。
しかもこの作品は、原作漫画(荒川弘・月刊少年ガンガン連載/全27巻)と2003年版アニメで成り立ちそのものが違います。解説が食い違って見えるのは、たいてい版が混ざっているからなんですよね。この記事では原作漫画と2009年版アニメを軸に、7体の能力・立ち位置・結末を一体ずつ確認していきます。物語全体の流れを先に押さえたい方は鋼の錬金術師のネタバレ解説記事もあわせてどうぞ。
- ホムンクルス7体の名前・大罪・最期が一覧で分かる
- お父様と七つの大罪という設定の根っこを理解できる
- 強さ議論が割れる理由と論点の在りかが分かる
- 2003年版アニメと原作の決定的な違いが分かる
この記事には『鋼の錬金術師』原作および2009年版アニメの結末に関わる重大なネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
ホムンクルス7体 早見表
| 名前 | 大罪 | 最期(原作単行本/2009年版アニメ話数) |
|---|---|---|
| プライド | 傲慢 | 26巻・106話。力と記憶をほぼ失い、赤子の姿でセリムとして生き延びる(消滅ではない) |
| ラスト | 色欲 | 10巻・39話。マスタング大佐に焼かれて消滅 |
| グラトニー | 暴食 | 原作終盤で消滅(巻数・話数は当サイトで一次確認が取れておらず断定を避けます) |
| エンヴィー | 嫉妬 | 23巻・95話。本来の矮小な姿を暴かれ、自ら賢者の石を引き千切って自決 |
| グリード(初代) | 強欲 | 8巻・31話。お父様に液体へ沈められ賢者の石に還元 |
| グリード(2代目) | 強欲 | 27巻・108話。リンと融合した状態で、お父様に魂を噛み潰され消滅 |
| ラース | 憤怒 | 26巻・105話。スカーとの戦闘に敗れ出血多量で死亡 |
| スロウス | 怠惰 | 24巻・96話。アームストロング少佐とシグ・カーティスに串刺しにされ消滅 |
※話数はアニメ「FULLMETAL ALCHEMIST」(2009年版)基準です。2003年版アニメは展開が異なるため、この話数は当てはまりません。
鋼の錬金術師 ホムンクルス一覧|7体の正体
まずは7体それぞれの正体を、生まれた順に沿って見ていきます。ホムンクルスは単なる敵キャラの集まりではなく、たった一人の存在から切り離された感情の断片。その前提を押さえると、一体ずつの性格や行動原理がすっと腑に落ちますよ。

ホムンクルスとは(お父様と七つの大罪)
『鋼の錬金術師』におけるホムンクルスは、人間が錬金術で作り出した生命体……という一般的なイメージとは少し違います。原作で描かれるのは、「お父様」と呼ばれる存在が自らの内から七つの感情を切り離し、それぞれに肉体と賢者の石を与えて生み出した存在です。
つまり彼らは、お父様が「人間らしさを捨てるために吐き出したもの」。傲慢、色欲、暴食、嫉妬、強欲、憤怒、怠惰という七つの大罪の名は、単なる二つ名ではなくその個体の出自そのものを指しています。
彼らが不死に近い再生力を持つのは、体内に賢者の石を抱えているから。逆に言えば石を使い切れば終わります。死が「命の消耗」ではなく「石の枯渇」として描かれるのが、この作品ならではの理屈でしょう。
生まれた順と序列
生まれた順は、①プライド ②ラスト ③グリード ④エンヴィー ⑤スロウス ⑥グラトニー ⑦ラース。この順番は物語終盤で明かされる設定で、最初に生まれたプライドが「始まりのホムンクルス」と呼ばれます。序列と強さが一致するわけではない点は、後半で改めて触れますね。
プライド・ラスト・グラトニー
ここからは個別に。まずは物語の中枢に食い込む三体からいきましょう。
プライド(傲慢)
最初に生まれた個体で、お父様の本体にもっとも近い存在。影を自在に操り、闇の中から無数の目と口を覗かせる姿は、初見のインパクトで言えば作中屈指ではないでしょうか。
表向きはブラッドレイ大統領の息子・セリムとして人間社会に紛れており、その二重性が明かされる場面は物語の大きな転換点になります。最期は26巻・106話で力と記憶をほぼ失い、赤子の姿となってセリムとして育て直される——消滅ではなく第二の生を歩む結末でした。
ラスト(色欲)
指先を刃物のように伸ばして貫く「最強の矛」。鎧越しでも装甲越しでも関係なく貫通するため、正面から受ければまず助かりません。冷静で口数の少ない立ち居振る舞いも印象的です。
その彼女を退けたのが10巻・39話のロイ・マスタング。再生を上回る速度で焼き続けるという、相性が決着を分けた一戦でした。
グラトニー(暴食)
擬似的な「真理の扉」を口の中に持ち、飲み込んだものを虚無へ送ってしまう存在。驚異的な嗅覚と怪力を備え、追跡役としても機能します。ただ単体では判断力に乏しく、命令されて動く場面が目立ちました。最期は原作終盤で消滅しますが、正確な巻数・話数については当サイトで一次確認が取れていないため、ここでは断定を避けておきます。
エンヴィー・グリード
この二体は、ホムンクルスの中でも「人間くささ」がもっとも強く出た存在だと思います。だからこそ、それぞれの結末が刺さるんですよね。
エンヴィー(嫉妬)
あらゆる人物の姿に化けられる変身能力の持ち主。潜入・攪乱に長け、物語の悲劇の引き金を何度も引いた張本人でもあります。一方で、素の戦闘力は7体の中では高いほうとは言えません。
23巻・95話、その正体である矮小な本来の姿を暴かれ、屈辱に耐えきれず自ら体内の賢者の石を引き千切って自決。人間を見下していた存在が、人間を羨んでいたと突きつけられる幕引きでした。より詳しい経緯はエンヴィーの正体と最期をまとめた記事で掘り下げています。
グリード(強欲)
体内の炭素を硬質化させる「究極の盾」を操り、物理攻撃をほぼ寄せつけない防御力を誇ります。金も女も地位も永遠の命も欲しいと公言する俗っぽさが、なぜか憎めない一体。
初代グリードは8巻・31話でお父様に沈められ賢者の石へ還元されますが、のちにシン国の皇子リンと融合した2代目として復帰します。そして27巻・108話、お父様に魂を噛み潰されて消滅。最後に欲しがったものが「仲間」だったという着地は、名場面として語り継がれています。
ラース・スロウス
残る二体は、能力の方向性がまるで正反対。片や積み上げた経験、片や純粋な出力です。
ラース(憤怒)
キング・ブラッドレイ大統領その人。銃弾の軌道すら見切る「最強の眼」を持ち、40年分の実戦経験に裏打ちされた剣技で戦います。ホムンクルスでありながら再生能力を持たないという特異な立ち位置で、純粋な技量だけで最上位に食い込む存在です。
26巻・105話、スカーとの死闘の末に出血多量で死亡。人間として死ぬことを選んだかのようなその最期は、賛否ではなく感嘆で語られることが多い印象があります。
スロウス(怠惰)
巨体に似合わず「最速のホムンクルス」を自称する怪力の持ち主。実際、その瞬発力は作中でもトップクラスと言っていいでしょう。とはいえ本人はとにかく動くのが面倒くさい、という徹底した怠け者。
24巻・96話、アームストロング少佐とシグ・カーティスの連携によって串刺しにされ消滅しました。強さと本人のやる気が噛み合わないまま退場した、ある意味もっとも大罪らしい一体かもしれません。
鋼の錬金術師 ホムンクルスの考察|強さと結末
ここからは一歩引いて、7体をまとめて眺めたときに見えてくるものを扱います。強さ議論の論点、2003年版アニメとの設定差、そして最期の並べ直し。読者のあいだで意見が割れるところは、割れているとはっきり書きますね。

強さ議論の整理(断定はしない)
「ホムンクルス最強は誰か」は、ファンのあいだで長く語られてきたテーマです。ただ、結論から言うと確定した答えはありません。作中で7体が総当たりで戦うわけではないため、比較の土俵がそもそも揃わないんです。
理由は三つ。能力の性質が違いすぎること、賢者の石の残量という可変要素があること、そしてマスタングの炎が再生を上回ったように勝敗が相性で決まる場面が多いことです。なお、お父様は7体とは別格の存在として描かれるため、最強論を立てるなら枠外に置くのが自然でしょう。
論点まとめ:技量で語るならラース、防御ならグリード、決定力ならラスト、格ならプライド——という具合に、評価軸を決めないと議論は噛み合いません。「誰が最強か」より「どの軸で見るか」を先に決めるのがおすすめです。
2003年版アニメとの設定の違い
ここ、いちばん混乱しやすいところです。アニメ『鋼の錬金術師』(BONES制作・2003年から2004年にテレビ東京系で放送)は、原作の連載中に放送が原作へ追いついたため、中盤以降オリジナルの展開へ分岐しました。
その結果、ホムンクルスの成り立ちが根本から異なります。原作と2009年版ではお父様から切り離された七つの感情でしたが、2003年版では人体錬成の失敗から生まれた存在という別体系。赤い石を大量に摂取すると、本来蘇るはずだった人物の姿へ近づくという設定も、原作にはないものです。
キャラクター単位でも、スロウスやエンヴィーは造形や性別表現の印象が大きく変わります。2003年版の話をするときに本記事の巻数・話数を流用するのは避けてください。別作品と割り切ったほうが、どちらも素直に楽しめます。2009年版の公式情報はアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」公式サイトで確認できます。
それぞれの最期まとめ
『鋼の錬金術師』の考察記事は鋼の錬金術師 考察まとめに集約しています。
冒頭の早見表を、今度は「退場した順」で並べ直してみましょう。物語がどう畳まれていったかが見えてきます。
初代グリードが8巻・31話、ラストが10巻・39話、エンヴィーが23巻・95話、スロウスが24巻・96話、ラースが26巻・105話、プライドが26巻・106話、2代目グリードが27巻・108話。グラトニーも終盤で消滅しますが、巻数の裏取りが取れていないため順序の断定は控えます。
こうして並べると、23巻以降に退場が集中しているのが分かりますね。しかもプライドだけが「死なずに人間として続く」形で残る。七つの大罪のうち傲慢だけが赦されたようにも読めて、何度読み返しても味わい深いところです。
個人的にいちばん胸に残るのはグリードの最期です。強欲を名乗った男が最後に手放せなかったものが仲間だった——この一点だけで、この作品を読んでよかったと思えました。
読者の感想・評価
7体それぞれに支持者がいるのが、このシリーズの層の厚さでしょう。上位に挙がりやすいのはラースとグリード、そしてプライド。理由もはっきりしていて、ラースは人間離れした技量、グリードは生き様、プライドは正体が判明する場面の衝撃、といった具合です。
一方で、エンヴィーは「嫌いだけど忘れられない」という評され方をされることが多い一体。作中で最も憎まれる立場にいながら、最期に見せた本音で評価が反転した読者も少なくないようです。
電子版のレビューでも原作の評価は高く、コミックシーモアの作品ページでは2026年8月時点で4.8前後が付いていました(数値は変動します)。読み返すたびに拾えるものが増えるタイプですね。
七つの大罪という設定は、実は結末まで読んで初めて全体像がつながる仕掛けになっています。誰がなぜその名前を背負わされたのか、お父様が何を捨てたかったのか——その答え合わせを味わうなら、コミックシーモアで全27巻を通して読むのがいちばんです。新規登録で使えるクーポンもあるので、まとめ買いのタイミングとは相性がいいはず(2026年7月時点・条件は変わることがあります)。
7体の最期を通しで見届けたい方のために、紙の全巻セットも置いておきます。
鋼の錬金術師のホムンクルスに関するよくある質問(FAQ)
Q1. ホムンクルスは全部で何体いますか?
A. 原作漫画および2009年版アニメでは7体です。傲慢・色欲・暴食・嫉妬・強欲・憤怒・怠惰という七つの大罪に対応しています。なお創造主である「お父様」は、この7体とは別の存在として描かれます。
Q2. 生き残ったホムンクルスはいますか?
A. プライドです。力と記憶をほぼ失った状態で赤子の姿となり、セリムとして生き延びます。他の個体が消滅・死亡する中で、唯一「その後」が描かれた存在と言えるでしょう。
Q3. 一番強いホムンクルスは誰ですか?
A. 明確な答えは作中で示されておらず、読者のあいだでも見解が分かれます。作中で7体が直接戦う場面がないうえ、賢者の石の残量や能力の相性で結果が変わるためです。当サイトでは断定せず、評価軸ごとに候補を挙げるにとどめています。
Q4. グリードは2人いるのですか?
A. 同じ「強欲」を宿した個体が二度登場します。初代グリードが賢者の石に還元されたのち、シン国の皇子リンと融合した2代目グリードが現れる流れです。記憶の連続性も物語上の見どころになっています。
Q5. 2003年版アニメと原作でホムンクルスの設定は違いますか?
A. 大きく異なります。原作と2009年版はお父様から切り離された感情という設定ですが、2003年版は人体錬成の失敗から生まれた存在という別体系です。本記事の巻数・話数は2003年版には当てはまりません。
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まとめ|鋼の錬金術師 ホムンクルスの総括
鋼の錬金術師のホムンクルスは、お父様が切り離した七つの感情に肉体と賢者の石を与えた7体でした。プライドは唯一その後を生き、ラストはマスタングに敗れ、エンヴィーは本来の姿を暴かれて自決。グリードは二度現れて仲間のために散り、ラースは技量だけで最上位に立ち、スロウスは速さを持て余したまま退場しました。
強さの順位に決着がつかないのは、この作品が力比べではなく、それぞれの罪が何を欲していたかを描いたからだと思います。
なお本記事の巻数・話数は原作漫画および2009年版アニメを基準にしています。配信状況や書誌情報は変わることがあるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。