水面斬り、水車、流流舞い。『鬼滅の刃』を読み始めて最初に名前を覚える技は、たいてい水の呼吸の型ではないでしょうか。竈門炭治郎が鱗滝左近次のもとで叩き込まれ、水柱・冨岡義勇が振るう——作品の入り口に置かれた、いわば看板とも言える呼吸です。ところが「全部でいくつの型があるのか」「拾壱ノ型の凪はどういう扱いなのか」と聞かれると、途端に答えが曖昧になりませんか。私も型名を並べ直してみて、この呼吸が単なる初心者向けの基礎ではないことに気づかされました。ここでは複数の資料で名称が一致した11の型を先に一覧表で示し、それぞれの技がどんな性格を持っているのか、使い手は誰なのか、そして水の呼吸からどんな呼吸が枝分かれしていったのかまで、順を追ってお伝えしますね。
記事のポイント
- 水の呼吸の全11型を技名と特徴つきで見渡せる
- 拾壱ノ型「凪」が義勇の独自技とされる理由がわかる
- 鱗滝門下を中心とした使い手の系譜をつかめる
- 炭治郎がヒノカミ神楽を使うようになった経緯を知れる
この先の一覧表と本文には、那田蜘蛛山編以降の戦いの結末に触れる内容が含まれます。本編をこれから読む予定で展開を知りたくない方は、表を飛ばして先へ進んでくださいね。
| 型 | 技名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 壱ノ型 | 水面斬り | 両腕を交差させて水平に斬りつける、水の呼吸の基本となる技 |
| 弐ノ型 | 水車 | 縦方向に回転しながら斬りつける広範囲攻撃 |
| 参ノ型 | 流流舞い | 流れる水のような滑らかな足運びで、移動しながら攻撃する技 |
| 肆ノ型 | 打ち潮 | 連続した斬撃で複数の敵に同時に対応する技 |
| 伍ノ型 | 干天の慈雨 | ほとんど痛みを感じさせない慈悲の剣撃。鬼が自ら頸を差し出した場合に使われるとされる |
| 陸ノ型 | ねじれ渦 | 螺旋状の斬撃による広範囲攻撃 |
| 漆ノ型 | 雫波紋突き | 水の呼吸の中でも最速とされる突き技 |
| 捌ノ型 | 滝壷 | 上から下への斬り下ろし。威力はこの呼吸でもトップクラスとされる |
| 玖ノ型 | 水流飛沫・乱 | 攻撃技ではなく歩法。接地面積と接地時間を最小にし、足場が悪くても動ける |
| 拾ノ型 | 生生流転 | 回転する連続斬撃。威力は水の呼吸で最大とされる |
| 拾壱ノ型 | 凪 | 冨岡義勇が編み出した独自技。射程内に入った鬼の技を無効化する防御特化の一手 |
鬼滅の刃の水の呼吸|全11型の一覧
まずは水の呼吸という系統そのものを、型の中身から押さえていきましょう。ここでは冒頭の一覧表をどう読めばいいのかを説明したうえで、水の呼吸が呼吸の体系の中でどんな位置に置かれているのか、壱ノ型から拾ノ型までがそれぞれどんな役割を担っているのか、そして拾壱ノ型「凪」だけがなぜ特別扱いされるのかを順に見ていきます。物語のどのあたりでこれらの技が飛び出すのかを先に確かめておきたい方は、鬼滅の刃のあらすじを全編まとめた記事から目を通してみてください。

結論|水の呼吸の型一覧表
記事の冒頭に置いた表が、この記事でいちばんお伝えしたい結論です。11という数字だけを覚えて終わりにするのはもったいないので、あの表から何が読み取れるのかを少しだけ補足させてください。
11型のうち10型までが体系の型
一覧を上から眺めると、壱ノ型から拾ノ型までがきれいに並び、最後に拾壱ノ型「凪」がぽつんと乗っている構造になっているのがわかります。この最後の一段だけ、性質がまったく違うんです。壱から拾までは水の呼吸という剣術の体系として受け継がれてきた型ですが、凪は冨岡義勇個人が編み出したものとして説明されます。つまり水の呼吸を学べば誰でも凪まで到達できる、という話ではありません。ここを取り違えると、水の呼吸という系統の輪郭がぼやけてしまいます。
もうひとつ、玖ノ型「水流飛沫・乱」だけが攻撃技ではないという点も見逃せないところ。斬るための技が並ぶ中に、移動と回避のための歩法がひとつ混ざっているわけですね。この構成自体が、水の呼吸が単純な火力の系統ではないことを物語っています。
型名の表記ゆれには注意が必要
正直にお伝えしておきたいことがあります。水の呼吸の型については、資料によって記載に幅があるんです。たとえば弐ノ型に「改」を付けた派生の呼び名や、漆ノ型に変化技の名を添えて紹介しているサイトも見かけます。ただ、こうした呼び名は私が確認した範囲では特定の一箇所でしか見つかりませんでした。そのためこの記事では、複数の資料で名称がそろっている11型だけを表に載せています。派生的な呼び名にも触れられている場合がある、という程度に受け止めておくのが安全でしょう。細かな表記まで確かめたい方は、原作コミックスやアニメ本編で直接確認するのがいちばん確実ですよ。
水の呼吸とは?基本系統の位置付け
そもそも水の呼吸は、鬼滅の刃の呼吸の中でどんな立ち位置にあるのでしょうか。ここを押さえておくと、型の並びの意味もぐっと見えやすくなります。
日の呼吸から枝分かれした基本の五流派のひとつ
鬼滅の刃に登場する呼吸は、すべての起源とされる日の呼吸を出発点にして枝分かれしています。そこから直接派生したのが、水・炎・岩・風・雷の五つ。この五つが「基本の呼吸」と呼ばれる流派で、水の呼吸はそのひとつというわけですね。さらにこの五流派から蛇や花、霞といった呼吸がまた枝分かれしていく、という構造になっています。
基本と言っても、初歩的という意味ではありません。むしろ後続の呼吸を生み出す土台になっているという意味での基本です。実際、水の呼吸からは複数の呼吸が派生していて、その広がりはこの記事の後半で詳しく扱います。
どんな形にも合わせられる対応力が持ち味
水の呼吸を語るときに必ず出てくるのが、対応力・汎用性という言葉です。水は器に合わせて形を変え、時には岩さえ削って流れていく——鱗滝左近次が弟子たちに説いた指導方針も、そうした水の性質になぞらえたものだったとされます。特定の状況に特化するのではなく、相手や地形に合わせて形を変えられること。これが水の呼吸に与えられた性格づけです。
型の並びを見返すと、この性格づけが技の設計にそのまま出ているのがわかります。水平の斬撃、回転による広範囲攻撃、移動しながらの攻撃、複数の敵への同時対応、突き、斬り下ろし、そして歩法。攻める・避ける・動く・鎮めるが一通りそろっているんですね。ひとつの必殺技で押し切る系統ではなく、状況ごとに引き出しを開けていく系統だと考えると腑に落ちます。
習得しやすさが使い手の多さにつながっている
もうひとつ、水の呼吸には基本の呼吸の中でも習得しやすいという評価があります。だから鬼殺隊士の中に水の呼吸の使い手が多い、という説明のされ方をよく見かけますね。柱として名を残す剣士から、隊列に並ぶ一般隊士まで、使い手の層がとにかく厚いんですね。入り口が広いぶん裾野も広がった、という理解でいいでしょう。
伍ノ型だけが持つ、斬らないための役割
水の呼吸の性格がいちばん鮮やかに出ているのが、伍ノ型「干天の慈雨」でしょう。これは鬼を苦しめずに斬るための型で、ほとんど痛みを感じさせないとされます。しかも鬼が自ら頸を差し出したときにのみ使われる型だという解説もあり、通常の戦闘技とは目的そのものが違うわけです。倒すための技が並ぶ一覧の中に、鎮めるための技がひとつ置かれている。水の呼吸を「基本だけど奥が深い」と感じさせるのは、こういう一手が用意されているからだと私は思っています。
壱ノ型〜拾ノ型の内容
ここからは体系の型である壱ノ型から拾ノ型までを、性格ごとにまとめて見ていきます。ひとつずつ暗記するより、役割で束ねたほうが頭に入りやすいはずですよ。
壱ノ型〜参ノ型|斬撃の基礎と足運び
入り口にあたる三つです。壱ノ型「水面斬り」は両腕を交差させたところから水平に斬りつける技で、水の呼吸を象徴する構えでもあります。弐ノ型「水車」は縦方向に回転しながら斬りつけるもので、体そのものを刃に変えるような広範囲攻撃。そして参ノ型「流流舞い」は、流れる水のような滑らかな足運びで移動しながら斬り込む技です。
この三つを並べると、水の呼吸が最初に教えるのは「斬る」と「動く」をつなげることなのだとわかります。止まって斬るのではなく、流れの中で斬る。基礎の段階からその発想が入っているのが面白いところですね。
肆ノ型〜陸ノ型|複数の相手と広い範囲への対応
次の三つは、対象が増えたときのための型です。肆ノ型「打ち潮」は連続した斬撃で複数の敵に同時に対応する技。陸ノ型「ねじれ渦」は螺旋を描く斬撃で、これも広い範囲を巻き込みます。そして両者の間に置かれているのが、先ほど触れた伍ノ型「干天の慈雨」。攻めの技に挟まれる形で慈悲の一撃が並んでいる配置は、あらためて見ると独特です。
群れで襲ってくる相手や、逃げ場のない場所での戦いを想定した型がしっかり用意されている点は、この呼吸の懐の深さを示しています。一対一だけを想定していないのは、実戦の系統として大きな強みでしょう。
漆ノ型・捌ノ型|速さと威力に振り切った二つ
ここで一気に尖ります。漆ノ型「雫波紋突き」は水の呼吸の中でも最速とされる突き技。斬るのではなく突くという選択が入ってくるのがポイントで、点で速さを出すための型ですね。対する捌ノ型「滝壷」は、上から下への斬り下ろし。名前のとおり落差そのものを威力に変える技で、水の呼吸ではトップクラスの威力を持つとされます。
速さの漆ノ型、重さの捌ノ型。並べてみると、この二つがちょうど対になっているのがわかります。相手の防御や再生力に応じて、点で抜くか面で潰すかを選べる設計になっているわけですね。
玖ノ型・拾ノ型|歩法と最大威力
最後の二つは性格が大きく離れます。玖ノ型「水流飛沫・乱」は、斬るための技ではありません。接地する面積と時間を最小限に抑えることで、足場が悪い場所でも素早く動けるようにする歩法です。ぬかるみでも、瓦礫の上でも、姿勢を崩さずに移動できる。鬼との戦いは屋内・山中・水辺と場所を選ばないので、この一手があるかないかで生存率がまるで変わってきます。
そして拾ノ型「生生流転」。回転を重ねながら繰り出す連続斬撃で、威力は水の呼吸で最大とされます。回転を重ねるほど威力が増していく性質を持つと説明されることが多く、水の呼吸の到達点として語られる型ですね。歩法の直後に最大威力が置かれている並びも、動いてこそ斬れるというこの呼吸の思想を映しているように感じます。
拾壱ノ型「凪」は義勇の独自技
さて、いよいよ拾壱ノ型です。水の呼吸を語るうえで避けて通れない、そして誤解も多いところ。ここは丁寧に押さえていきましょう。
那田蜘蛛山で累の血鬼術を止めた一撃
凪が初めて描かれるのは那田蜘蛛山編、コミックスでいうと5巻の42話にあたります。下弦の伍・累が操る糸の血鬼術に炭治郎たちが追い込まれた場面で、駆けつけた冨岡義勇が繰り出したのがこの型でした。効果は射程内に入った鬼の技をすべて無効化するというもの。硬い糸を力任せに斬るのではなく、届く前に何も起きなかったことにしてしまうわけです。
攻撃を受け止めるでも、かわすでもなく、成立させない。水面が完全に凪いだ状態を技にしたような発想で、初見で見たときの静けさは今でも印象に残っています。義勇という剣士の底知れなさが、あの一瞬に凝縮されていました。
体系の「型」ではなく義勇個人が編み出した技
ここが本記事でいちばん強調したい点です。凪は水の呼吸の壱ノ型から拾ノ型と同じ意味での「型」ではありません。複数の資料で、冨岡義勇個人が編み出したオリジナル技として説明されています。つまり水の呼吸という体系にもともと備わっていたものではなく、既存の型を極めた先で個人が到達した一手、という位置づけですね。
この事実は、水の呼吸という系統の性格をよく表していると思います。器に合わせて形を変えられる呼吸だからこそ、極めた剣士が自分だけの形にたどり着ける余地があった。凪の存在は、水の呼吸が完成された固定の体系ではなく、伸びしろを残した系統であることの証明とも読めるわけです。義勇という剣士そのものについてもっと知りたくなった方は、冨岡義勇の強さと人物像を掘り下げた記事のほうで詳しく扱っています。
万能ではない|通用しない相手もいる
ただし、凪は無敵の防御ではありません。上弦クラスの鬼、たとえば猗窩座のような相手や鬼舞辻無惨には通用しないという解説があります。射程内という条件が付いている以上、その外から届く攻撃や、そもそも技として無効化しきれない相手には効かないと考えるのが自然でしょう。
そう考えると、凪は「格下の技を確実に消す」ための一手だと捉えたほうが実像に近いのかもしれません。累の血鬼術を止めた場面がまぶしすぎて万能技のように語られがちですが、そこは冷静に見ておきたいところです。強力ではあっても万能ではない——この線引きを押さえておくと、無限城編での義勇の戦いもより深く読めるようになりますよ。
鬼滅の刃の水の呼吸の使い手と派生
ここからは視点を変えて、水の呼吸を実際に振るう剣士たちと、この呼吸から生まれた別系統の呼吸を追いかけていきます。誰がこの呼吸を継いだのか、炭治郎はなぜヒノカミ神楽へ軸足を移していったのか、そして水の呼吸はどこまで枝を伸ばしたのか。系統の広がりが見えてくると、この呼吸が作品の中で担っている役割の大きさもはっきりしてきます。

使い手一覧|鱗滝門下の系譜
水の呼吸の使い手を並べると、その多くが元水柱・鱗滝左近次のもとから出ていることに気づきます。まずは確認できた使い手を表にまとめておきましょう。
| 使い手 | 立場 | 備考 |
|---|---|---|
| 竈門炭治郎 | 主人公 | 鱗滝左近次に師事して基礎として習得。のちにヒノカミ神楽と併用するようになる |
| 冨岡義勇 | 水柱 | 鱗滝の継子。拾壱ノ型「凪」を自ら編み出した使い手 |
| 鱗滝左近次 | 元水柱・育手 | 現在は隊士の育成に専念。炭治郎・義勇・錆兎・真菰ら複数の弟子を指導 |
| 錆兎 | 鱗滝の元弟子 | 門下でも屈指の使い手とされる。炭治郎に稽古をつけた人物 |
| 真菰 | 鱗滝の元弟子 | 錆兎とともに鱗滝のもとで水の呼吸を学んだ剣士 |
| 村田 | 鬼殺隊士 | 鱗滝とは別の育手に師事したため兄弟弟子ではないとされる |
| 神崎アオイ | 元隊士 | 使い手として言及されるが、現在は隊士の育成・診療補助にまわっている |
鱗滝左近次と門下の剣士たち
この系譜の中心にいるのが、元水柱の鱗滝左近次です。現在は前線を退いて育手として隊士の育成に専念しており、炭治郎・義勇・錆兎・真菰と、名の知れた水の呼吸の使い手の多くが彼の門下から出ています。水は器に合わせて形を変えるという趣旨の教えを弟子たちに授けたのも鱗滝で、水の呼吸の対応力という性格づけは、この人の指導方針とセットで語られることが多いですね。
中でも錆兎は、門下でも屈指の使い手とされる剣士です。炭治郎が最終選別へ進む前に稽古をつけた相手でもあり、彼との立ち合いがなければ炭治郎はあの岩を斬れていなかったでしょう。真菰もまた同じく鱗滝のもとで学んだ剣士として描かれます。二人がどんな存在だったのかは物語の中で明かされていきますが、ここではあえて触れずにおきますね。
鱗滝門下ではない使い手
一方で、水の呼吸の使い手すべてが鱗滝の弟子というわけでもありません。炭治郎や義勇と同じ系統を使いながら、別の育手に師事したとされるのが村田です。同じ呼吸でも師の系統が違うという例があるのは、水の呼吸の使い手がいかに広く分布しているかの裏返しでもありますね。
ただ、この点はひとつ注意しておきたいところです。村田が水の呼吸の使い手であるという説明は複数の考察サイトで見かけるものの、私が確認した限りではいずれもファンサイトや解説記事の記述で、原作コミックスの描写そのものに当たって確かめたわけではありません。ですのでここでは複数の考察で水の呼吸の使い手とされている、という書き方にとどめておきます。技量の差から刀身や水流の表現が控えめに見える、といった解説もありますが、こちらもあわせて断定は避けておきましょう。神崎アオイについても同様で、使い手として名前が挙がるものの、現在は蝶屋敷で隊士の育成と診療の補助にまわっている立場です。
炭治郎が神楽へ移行した理由
この見出しから先は、那田蜘蛛山編と遊郭編の展開に踏み込むネタバレを含みます。本編をまだ読んでいない方はご注意ください。
水の呼吸から入った炭治郎が、なぜヒノカミ神楽を使うようになったのか。ここは検索でもよく知りたがられるところなので、経緯を順に追っていきます。
那田蜘蛛山での窮地が転機になった
きっかけは那田蜘蛛山編、下弦の伍・累との戦いでした。累の血鬼術で日輪刀の刀身が折れ、炭治郎は絶体絶命の状況に追い込まれます。その走馬灯の中でよみがえったのが、亡き父・炭十郎が舞っていたヒノカミ神楽の光景でした。炭治郎はその舞を剣技として応用し、実戦の場で発動させます。
結果は劇的でした。水の呼吸では断ち切れなかった累の糸を、ヒノカミ神楽は斬ることができたのです。威力の面で明確に上回ったわけですね。ただし当時は反動が大きく、使ったあとは体が動かなくなってしまうという重い代償を伴っていました。
遊郭編では水の呼吸との併用ができるようになった
転機のあと、炭治郎は水の呼吸を捨てたわけではありません。堕姫・妓夫太郎と対峙する遊郭編では、水の呼吸とヒノカミ神楽を組み合わせて戦えるようになっています。しかも以前のような反動を抑え込み、最後まで戦い抜けるところまで到達しました。
つまり移行というより、引き出しが二つに増えたと表現したほうが正確でしょう。水の呼吸で培った体の使い方が土台にあるからこそ、ヒノカミ神楽を実戦で回せるようになった——そう捉えると、水の呼吸は途中で捨てられた基礎ではなく、最後まで炭治郎を支え続けた土台だったことになります。
適性の差という見方は考察にとどまる
ここで一点、はっきり書き分けておきたいことがあります。「炭治郎はもともと水の呼吸よりヒノカミ神楽のほうに適性があったのではないか」という見方を目にすることがありますよね。竈門家に代々伝わってきた舞なのだから体が覚えていたはずだ、という筋の読み方です。
この見方自体はよく語られていますが、これはあくまで考察であって、公式が断定した情報ではありません。私自身うなずきたくなる解釈ではあるものの、記事として書くなら「そういう見方もある」という線を守るべきだと思っています。なおヒノカミ神楽が日の呼吸そのものであるという点については複数の資料の説明が一致しており、竈門家が舞という形で代々伝えてきたものが窮地で剣技として立ち上がった、という位置づけで語られています。
水から生まれた派生の呼吸
水の呼吸の広がりを語るなら、ここは外せません。基本の五流派の中でも、水の呼吸はとりわけ多くの枝を伸ばしています。
蛇の呼吸|伊黒小芭内
水の呼吸から派生したひとつが、蛇柱・伊黒小芭内が使う蛇の呼吸です。曲がりくねった軌道で相手の隙間を縫うように斬り込む戦い方で、水の流れの不定形さが別の方向へ振り切れた系統だと考えるとわかりやすいでしょう。真っ直ぐに流れる水と、うねって進む蛇。同じ「決まった形を持たない」という性質が、まったく違う姿で出てきたわけですね。
花の呼吸|胡蝶カナエと栗花落カナヲ
もうひとつの派生が花の呼吸です。使い手は元・花柱の胡蝶カナエと、その継子である栗花落カナヲ。カナエは蟲柱・胡蝶しのぶの姉にあたる人物ですね。花の呼吸は型の総数がはっきり確認できていない系統ですが、終ノ型が最終奥義として存在する点は複数の資料で共通しています。
蟲の呼吸|水系統からの孫派生
そして花の呼吸から、さらに枝分かれしたのが蟲の呼吸です。水から見ると孫にあたる、二段階の派生ということになります。使い手は蟲柱・胡蝶しのぶ。
この呼吸が生まれた経緯が、また象徴的なんです。しのぶは小柄で、鬼の頸を斬るだけの腕力がありませんでした。そこで藤の花の毒を用いる戦い方を独自に組み立て、頸を斬ることを目的としないという他に例のない系統をつくり上げます。斬れないなら斬らない方法で倒す、という発想の転換ですね。
器に合わせて形を変える水の呼吸から、蛇のうねりが生まれ、花の舞が生まれ、そこからさらに毒という答えが出てきた。この枝分かれの多さこそが、水の呼吸の対応力を何より雄弁に示していると私は思います。全14種の呼吸がどう連なっているのか、系統図の全体像は鬼滅の刃の呼吸一覧と型を解説した記事で確かめてみてください。
型と使い手をひととおり追いかけてくると、これらの技がどの戦いで飛び出したのか、本編の流れそのものを確かめたくなってきますよね。物語全体の展開は下の記事にまとめてあります。
-
-
鬼滅の刃 あらすじを各編順番にざっくり解説|全23巻
週刊少年ジャンプで2016年から2020年まで連載され、全23巻できれいに完結した『鬼滅の刃』。いざ最初から追いかけようとすると、立志編から無限城編まで編がいくつもあって「どの順番で読めばいいの?」「 …
続きを見る
鬼滅の刃の水の呼吸に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 水の呼吸は全部でいくつの型がありますか?
A. 壱ノ型から拾壱ノ型「凪」までの11種類です。ただし拾壱ノ型だけは体系として受け継がれてきた型ではなく、冨岡義勇が個人で編み出した技として説明されます。体系の型という意味では壱ノ型から拾ノ型までの10種類、と押さえておくと混乱しません。
Q2. 拾壱ノ型「凪」は誰の技ですか?
A. 水柱・冨岡義勇のオリジナル技です。射程内に入った鬼の技を無効化する防御特化の一手で、那田蜘蛛山編(コミックス5巻・42話)で下弦の伍・累の血鬼術を防いだ場面が初出になります。ただし上弦クラスの鬼や鬼舞辻無惨には通用しないという解説もあり、万能の防御というわけではありません。
Q3. 水の呼吸の使い手には誰がいますか?
A. 竈門炭治郎、冨岡義勇、元水柱で育手の鱗滝左近次、錆兎、真菰などが挙げられます。多くが鱗滝門下の系譜にあたる剣士です。このほか村田や神崎アオイも使い手として言及されますが、こちらは考察サイトの記述が中心のため、断定はしにくいところですね。
Q4. 炭治郎はなぜヒノカミ神楽を使うようになったのですか?
A. 那田蜘蛛山で累に追い込まれ、日輪刀が折れた窮地で、亡き父が舞っていたヒノカミ神楽を思い出したのがきっかけです。水の呼吸では斬れなかった糸を斬ることができた一方、当時は反動で体が動かなくなる弱点もありました。遊郭編以降は水の呼吸との併用ができるようになっています。
Q5. 水の呼吸から派生した呼吸は何ですか?
A. 蛇の呼吸と花の呼吸の二つです。さらに花の呼吸から蟲の呼吸が枝分かれしているため、水から見ると蟲の呼吸は二段階先の派生にあたります。基本の五流派の中でも枝の広がり方が目立つ系統ですね。
まとめ|鬼滅の刃の水の呼吸
鬼滅の刃の考察をもっと読みたい方は、テーマ別にまとめた鬼滅の刃の考察記事まとめから気になるものを探してみてください。すべての呼吸の起点にあたる系統については、日の呼吸(ヒノカミ神楽)を解説した記事で詳しく扱っています。
ここまで、水の呼吸の全11型から使い手の系譜、派生した呼吸までを見てきました。最後にポイントを振り返っておきましょう。
型を並べ直してみて私がいちばん面白いと感じたのは、水の呼吸が「決まった形を持たないこと」を最後まで貫いている点でした。器に合わせて形を変える教えから始まり、斬るための型と斬らないための型を両方そなえ、蛇へ花へ蟲へと枝を伸ばし、そして極めた剣士のもとで凪という個人技まで生み出してしまう。水の呼吸は完成された体系ではなく、まだ形が定まりきっていない系統なのだと思います。基本と呼ばれながらいちばん奥行きがある——この呼吸が長く愛されている理由は、そのあたりにあるのではないでしょうか。
なお、型名の細かな表記や設定の詳細については資料によって食い違う部分があり、この記事でも複数の資料で一致した範囲にとどめています。正確な情報は公式サイトをご確認ください。作品の情報は鬼滅の刃公式ポータルサイトにまとまっています。そのうえで原作コミックスやアニメ本編で直接確かめていただくのがいちばん確実ですし、技や剣士をどう受け止めるかは、あなた自身が読んで感じたことを大切にしていただければと思います。