麻痺して動かなくなった手足を、本人の同意のもとで切り落とす。久坂部羊の小説デビュー作『廃用身』は、そんな療法「Aケア」を始めた医師・漆原糾の物語です。
2026年には染谷将太の主演で映画になりました。小説と映画では、結末が違います。
記事のポイント
- 漆原は小説でも映画でも、自分の頭を廃用身とする言葉を残して命を絶つ
- 小説では妻の菊子も後を追い、映画の菊子は生き残る
- 映画のラストは、洗濯物を干す妻と、聞こえたような夫の声
- 映画はPrime Videoで見放題独占配信(2026年11月時点)
廃用身のネタバレ|あらすじと小説・映画の結末
漆原が考えた「Aケア」は広まりますが、告発と事件で一気に暗転します。漆原は小説でも映画でも、最後に自ら命を絶ちます。

『廃用身』の基本情報(原作小説と映画)
『廃用身』には、久坂部羊の小説デビュー作と、それを原作にした2026年の映画があります。
原作小説(幻冬舎)
小説は2003年に幻冬舎から単行本で出ました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 久坂部羊 |
| 単行本 | 幻冬舎・2003年5月23日発売 |
| 文庫 | 幻冬舎文庫・2005年4月21日発売 |
| ほかの形 | 電子書籍・オーディオブック |
出版されたときの宣伝文句は「映画化、絶対不可能!」でした。なお、漫画化された作品は見つかりませんでした。
映画(2026年)
映画は2026年5月15日に、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督・脚本 | 𠮷田光希 |
| 主演 | 染谷将太(漆原糾役) |
| 上映時間 | 125分(PG12) |
| 配給 | アークエンタテインメント |
「廃用身」とは?題名の意味
廃用身とは、麻痺などで回復の見込みがなくなった手足のことです。
動かない手足を指す言葉
小説は、漆原のまえがきの「「廃用身」という言葉をご存じでしょうか。」という問いかけから始まります。
題名は、この動かない手足そのものを指しています。
廃用身を切り落とす「Aケア」
漆原が考えたのは、簡単にいえば、お年寄りの麻痺した手足を切断する療法です。手記の中で、この療法は「Aケア」と呼ばれるようになります。
第四章の項目には、「「廃用身」という苦痛からの解放」という言葉が並びます。患者を苦痛から解き放つという善意の理屈が、物語の出発点です。
あらすじ|異人坂クリニックの「Aケア」
舞台は、神戸の老人デイケア「異人坂クリニック」です。院長の漆原糾が考えた治療が、少しずつ広まっていきます。
小説は漆原の手記と編集部註の二部構成
小説の前半は、漆原が書いた手記「廃用身」です。後半は、原稿を預かった編集者の補足の文章「編集部註」が続きます。
手記は、向幻社の編集部長・矢倉俊太郎の勧めで書き下ろされた、という形を取っています。
手記で語られる異人坂クリニック
手記を書いた時点の漆原は35歳です。パプアニューギニアで5年間、マラリアの研究をしていました。
クリニックは、神戸の北野坂と山本通りが交わる山側にあります。開業は1999年4月で、介護保険が始まるちょうど1年前でした。
第一章には、「それならもうこんな足、切り落としてくれっ」という叫びも出てきます。
手記には、妻と息子と3人で六甲山の豪邸に住み、2年前に脳梗塞で倒れた男性も登場します。
第五章「第一例目の決断」で、漆原は最初の切断に踏み切ります。第七章では「Aケアカンファ」が発足し、第八章の題は「これは奇跡か」です。
映画のあらすじ
映画では、両脚と左腕の麻痺に苦しんでいた岩上武一が、漆原の治療で人生を取り戻します。
老齢期医療に革命を起こす可能性を感じた編集者の矢倉は、漆原に本の出版を持ちかけます。
ところが、デイケアに関する内部告発が週刊誌に流出します。さらに患者の家で起きた事件をきっかけに、すべてが暗転していきます。
小説の結末|漆原の最期と編集部註
ここから先は、小説の結末に触れます。
小説の漆原は、自分の頭を廃用身とする言葉を残し、列車に飛び込んで命を絶ちます。
告発されて追い詰められる漆原
Aケアはマスコミに告発され、漆原は世間から追い詰められていきます。
妻の菊子も後を追う
漆原の死後、妻の菊子も後を追って命を絶ちます。
編集部註で明かされること
手記のあとには、矢倉の「編集部註――封印された「Aケア」とは何だったのか」が続きます。
矢倉は、週刊誌の騒動から漆原の死までの経緯をたどっていきます。
映画の結末|岩上の事件と漆原の最期
ここから先は、映画の結末に触れます。
映画の漆原も、「頭は私の廃用身」と書き残し、線路で自ら命を絶ちます。
岩上が家族を殺める事件
岩上は、家で息子から虐待を受けていました。
Aケアで元気を取り戻した岩上は、やがて妻と息子を殺め、自らも命を絶ちます。
追い詰められていく漆原
Aケアを受けた別の患者も、自ら命を絶ちます。
さらに、漆原が子どものころ蝶の羽をむしっていたという話まで報じられます。漆原の家には、脅迫の手紙も届くようになります。
「頭は私の廃用身」の置き手紙
漆原が残したメモには、「頭は私の廃用身」と書かれていました。漆原は線路に横たわり、自ら命を絶ちます。
菊子と残された原稿
漆原の死後、菊子は残された原稿を矢倉に託します。けれど、その本は出版されません。
菊子は生き残り、漆原が亡くなった踏切を訪れます。
映画のラストシーンの意味
映画は、Aケアで手足を切断した寝たきりの夫を持つ妻が、庭で洗濯物を干す場面で終わります。
洗濯物と、聞こえたような夫の声
風に洗濯物が揺れるなか、寝たきりの夫の声がかすかに聞こえたように感じられます。
その声が回復の兆しなのか、空耳なのかは、はっきりしません。
監督が描いた「回復の予感」
𠮷田光希監督は、回復した姿を直接見せるのではなく、「回復の予感」を描きたかったと語っています。
声が本物かどうかを決めないことで、Aケアが救いだったのかという問いを観る人に手渡したラストだと私は受け取っています。
廃用身のネタバレ考察と小説・映画の違い
漆原が自ら命を絶つところまでは、小説も映画も同じです。違いが出るのは、菊子の運命と、漆原の原稿の行方です。

小説と映画の結末の違い
いちばん大きな違いは菊子です。小説では漆原の後を追い、映画では生き残ります。
結末の違いを比べる
| 項目 | 小説 | 映画 |
|---|---|---|
| 語り | 漆原の手記と矢倉の編集部註 | 三人称の視点 |
| 漆原の最期 | 列車に飛び込む | 線路に横たわる |
| 菊子 | 後を追って命を絶つ | 生き残る |
| 漆原の原稿 | 編集部註を付けて本になる | 出版されない |
| 終盤 | 矢倉が編集部註で経緯をたどる | 別の患者の家の洗濯物で終わる |
映画で変わった語りと人物
映画は、原作の独白のスタイルを取り払い、視点も三人称に変えています。
映画では、矢倉の母が施設に移ることになる場面も描かれます。
原作と映画で結末が変わる作品では、悪い夏のネタバレ(原作の結末と映画の違い)も比べがいがあります。
「頭は私の廃用身」に込めた意味を考察
漆原は、患者の手足に向けてきた「廃用身」という見方を、最後に自分の頭に向けました。
患者の手足から自分の頭へ
廃用身は、回復の見込みがない手足のことでした。漆原は、その手足を切ることが患者を苦痛から解き放つと考えていました。
その言葉を頭に当てたのは、自分の考えそのものを、もう役に立たない部分として切り捨てたように見えます。
善意を疑い始めた医師
映画は、漆原をサイコパスとしては描かない方針で作られています。
だからこそ漆原は、善意で始めたAケアを自分でも信じ切れなくなったのではないか。私はそう考えています。
『廃用身』は実話?
『廃用身』は実話ではなく、フィクションです。
モデルは実在のクリニック
原作は、久坂部羊が勤めていた実在のクリニックをモデルにしています。
久坂部は「「切って楽になれるなら切ってほしい」は、私が現場で実際に聞いた言葉です。」と明かしています。
Aケアは物語のために作られた架空の療法で、現実の医療で行われている治療ではありません。
ノンフィクションに見える手記の形
小説の冒頭には、「本書に登場するお年寄りは一部実名で書いています。」という「お断り」まで付いています。
手記と編集部註を組み合わせた本物の本のような作りが、実話かと思わせる理由です。
介護が題材のホラーなら、屍介護のネタバレもどうぞ。
映画『廃用身』のキャストとスタッフ
主人公の漆原糾(うるしはら・ただす)を演じるのは、染谷将太です。
主なキャスト
| 役 | キャスト | 人物 |
|---|---|---|
| 漆原糾 | 染谷将太 | 異人坂クリニックの院長 |
| 矢倉俊太郎 | 北村有起哉 | 漆原に本の出版を持ちかける編集者 |
| 岩上武一 | 六平直政 | 両脚と左腕が麻痺した患者 |
| 漆原菊子 | 瀧内公美 | 漆原の妻 |
ほかに、次の俳優が出演しています。
- 廣末哲万
- 中村映里子
- 中井友望
- 吉岡睦雄
スタッフ
監督と脚本は𠮷田光希です。原作は久坂部羊の小説『廃用身』(幻冬舎文庫)で、配給はアークエンタテインメントが務めました。
映画『廃用身』はどこで見れる?
2026年11月時点では、Prime Videoの見放題独占配信で見られます。NetflixやU-NEXTでの配信は確認できませんでした。
Prime Videoでの配信
Prime Videoでは、2026年8月1日からレンタル・購入、10月7日から見放題の独占配信が始まりました。
原作小説で読む
原作小説は幻冬舎文庫のほか、電子書籍とオーディオブックでも出ています。
原作小説は幻冬舎文庫で読めます。
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廃用身に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 廃用身とはどういう意味ですか?
A. 麻痺などで回復の見込みがなくなった手足のことです。物語では、その手足を切断する療法「Aケア」が描かれます。
Q2. 『廃用身』は実話ですか?
A. 実話ではなく、フィクションです。原作は、久坂部羊が勤めていた実在のクリニックをモデルにしています。
Q3. 小説と映画で結末は違いますか?
A. 違います。漆原が自ら命を絶つのは同じですが、小説では妻の菊子も後を追い、映画の菊子は生き残ります。
Q4. 映画のラストシーンはどうなりますか?
A. Aケアで手足を切断した夫を持つ妻が、庭で洗濯物を干す場面で終わります。寝たきりの夫の声が聞こえたようにも感じられる、余韻の残るラストです。
Q5. 映画『廃用身』はどこで見れますか?
A. 2026年11月時点では、Prime Videoで見放題独占配信されています。NetflixやU-NEXTでの配信は確認できませんでした。
まとめ:廃用身のネタバレと結末
『廃用身』は、動かない手足を切る「Aケア」を始めた医師が、自分の頭を廃用身として命を絶つ物語です。
- 小説は漆原の手記と、矢倉の編集部註の二部構成
- 小説の漆原は列車に飛び込み、妻の菊子も後を追う
- 映画の漆原は「頭は私の廃用身」と書き残し、線路で命を絶つ
- 映画の菊子は生き残り、漆原の原稿は出版されない
- 映画のラストは、洗濯物を干す妻と聞こえたような夫の声
- 作品は実話ではなく、Aケアは架空の療法

