理想の一家を殺したのは誰だったのか。貫井徳郎の小説『愚行録』は、関係者の語りを重ねて、その答えへ近づいていく物語です。
2017年には、妻夫木聡と満島ひかりの共演で映画にもなりました。犯人は同じでも、小説と映画では真相の見せ方が違います。
記事のポイント
- 田向一家を殺した犯人は、小説も映画も田中光子
- 取材を続ける男の正体は光子の兄で、目的は口封じ
- 映画では、光子の娘の父親は兄の武志と示される
- 映画はU-NEXTで見放題(2026年11月時点)
愚行録のネタバレ|犯人は光子、小説と映画の結末
ここから先は、犯人と結末に触れます。
田向一家を殺した犯人は、小説でも映画でも田中光子です。
事件を取材する男は光子の兄で、妹の犯行に気づいた人を探していました。

新聞記事と証言で進む愚行録のあらすじ
『愚行録』は、一家惨殺事件の真相を関係者の語りで追う物語です。
小説は新聞記事から始まる
小説の冒頭にあるのは、「3歳女児衰弱死」という見出しの新聞記事です。
育児放棄の疑いで逮捕された母親の名は、田中光子。続く章から語られるのは、別の一家の事件です。
小説は隣人や友人の証言で進む
本編は、田向家の近所の主婦がライターに語る場面で始まります。事件からの1年間、話を聞きに来る人は絶えません。
田向家があるのは、池袋からほんの数駅の閑静な住宅街です。深夜に忍び込んだ何者かに、夫と妻、子ども2人が殺されました。
隣人や友人の語りを重ねるうちに、事件と被害者の姿が見えてきます。語りの合間には、ある女性が「お兄ちゃん」へ話しかける独白も入ります。
映画は週刊誌記者の田中が取材する
映画の田向家は、エリートサラリーマンの夫と妻、一人娘の3人です。事件が迷宮入りしたまま1年が過ぎ、週刊誌記者の田中武志が取材を始めます。
田中が話を聞くのは、次の4人です。
- 渡辺正人(夫・浩樹の会社の同僚)
- 宮村淳子(妻・友希恵の大学の同期)
- 尾形孝之(淳子の恋人だった男性)
- 稲村恵美(大学時代の浩樹と付き合っていた女性)
物語は、証言を聞く現在と過去を行き来しながら進みます。
見えてくるのは、理想の夫婦とはかけ離れた実像です。その一方で、田中の妹の光子は育児放棄の疑いで逮捕されています。
田向一家の事件の犯人は田中光子
田向一家を殺した犯人は、田中武志の妹の田中光子です。小説でも映画でも、ここは変わりません。
光子と田向家をつなぐ大学時代
光子は大学時代、田向家の妻と同じ大学にいました。宮村の証言では、光子はその大学で妻に利用されていました。
映画の光子が語る犯行
映画の光子は、誰もいない部屋で犯行を語ります。光子の中で何かが切れたような犯行です。
映画の事件では、犯人がシャワーを浴びて痕跡を消し、逃げています。その犯人も光子です。
田中武志の取材の本当の目的
田中の本当の目的は、光子の犯行に気づいた人を探し、口封じをすることでした。
映画の田中は最初から光子の兄
映画の田中は、最初から光子の兄として登場します。事件を追う記者に見えますが、取材の相手に、光子の犯行に気づいた人がいないかを探っていました。
小説の取材者は最後に正体が分かる
小説の取材者は、最後まで正体が伏せられています。話を聞いて回った理由は映画と同じで、光子を疑う人を探すためでした。
映画の結末|千尋の死とバスのラスト
ここから先は、映画の結末に触れます。
映画のラストは、田中がバスで妊婦に席を譲る場面です。そこへ至るまでに、宮村と千尋が命を落とします。
田中が宮村淳子を殺す
光子を疑う宮村淳子を、田中は殺します。現場には尾形の吸い殻を残し、疑いをそらしました。
この吸い殻の工作は、映画だけの展開です。
光子の娘の千尋が亡くなる
入院していた光子の娘の千尋は、そのまま亡くなります。
弁護士が知る千尋の父親
弁護士の橘が兄妹の母親を訪ね、千尋の父親は兄の武志だと示されます。
最後の面会で、光子は田中に「秘密」の話をします。
田中がバスで席を譲るラスト
ラストの田中は、バスで妊婦に席を譲ります。冒頭のバスでは、席を譲るよう注意され、足が悪いふりをしていました。
小説の結末|「お兄ちゃん」の正体
ここから先は、小説の結末に触れます。
小説は、光子が語りかけていた「お兄ちゃん」が取材者だと分かって終わります。
宮村は通り魔のように殺される
光子を疑った宮村は、通り魔のように殺されます。手を下したのは光子の兄で、口封じのためでした。
冒頭の記事の母親が犯人だった
冒頭の新聞記事で逮捕された母親は、一家を殺した光子その人です。逮捕の理由は一家の事件ではなく、3歳の女児を衰弱死させた疑いでした。
独白の「お兄ちゃん」は取材者だった
語りの合間の独白は、光子の言葉です。話しかける相手の「お兄ちゃん」こそ、関係者を訪ね歩いた取材者でした。
兄は宮村を殺してまで光子をかばいました。それでも光子は、子の死の件で逮捕されています。
映画と小説の違い
犯人は同じですが、被害者の人数と取材者の見せ方が違います。
小説と映画を比べる
| 項目 | 小説 | 映画 |
|---|---|---|
| 被害者 | 夫・妻・子ども2人の4人 | 夫・妻・一人娘の3人 |
| 取材者 | 最後に光子の兄と分かる | 最初から光子の兄の田中武志 |
| 語り | 取材者へのインタビューと光子の独白だけ | 田中が関係者を訪ねて話を聞く |
| 光子の逮捕 | 冒頭の新聞記事で報じられる | 田中の妹の事件として描かれる |
| 宮村の殺害 | 通り魔のように殺す | 現場に尾形の吸い殻を残す |
| 終わり方 | 「お兄ちゃん」が取材者と分かる | 田中がバスで妊婦に席を譲る |
原作者が見た映画
原作者の貫井徳郎は、内容的にも構成的にも映像化に向いていない作品だと認識していました。
完成した映画については、「思った以上に原作に忠実でびっくりした」と語っています。
語り手が替わるたびに真相が見えてくる小説なら、告白(湊かなえ)のネタバレもどうぞ。
愚行録のネタバレ考察|題名の意味と子の父親、配信
題名の「愚行」は、被害者だけでなく、語る人たちの行いにも向いていると私は読んでいます。映画は2026年11月時点で、U-NEXTの見放題で見られます。

愚行録という題名の意味を考察
英題は「A CATALOG OF FOLLIES」で、題名どおり人間たちの愚行のカタログです。
被害者も証言者も愚かな物語
映画の証言で見えてくるのは、夫婦の実像だけではありません。語っている証言者たち自身の、思いもよらない姿も浮かびます。
人の愚かさを語る人もまた、記録される側にいる。ここが題名の怖さだと私は考えています。
格差社会と後味の悪さ
文庫の宣伝文句は「格差社会の醜さを描いた、ゆるぎない傑作!」でした。
貫井徳郎自身も、『愚行録』を「イヤミスのはしりみたいな作品」と語っています。後味のよさを求める人には向かない一本です。
光子の子の父親は兄の武志と示される
映画では、光子の娘の千尋の父親は兄の武志と示されます。
映画の「秘密」は2つある
光子が口にする秘密は、田向一家の事件だけではありません。千尋の父親が武志だということも重なっています。
兄妹はどちらも、親の虐待を受けて育ちました。
小説の子の父親
小説では、最後の光子の言葉をそのまま受け取れば、兄との子と読めます。
愚行録は実話なのか
『愚行録』は、実話と明言された作品ではありません。映画の原作は、第135回直木賞候補作になった貫井徳郎の小説です。
田向一家は、物語の中の架空の一家です。
映画『愚行録』の基本情報とキャスト
映画『愚行録』は、2017年2月18日に公開された120分の作品です。
映画の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | 石川慶 |
| 脚本 | 向井康介 |
| 原作 | 貫井徳郎 |
| 撮影 | ピオトル・ニエミイスキ |
| 音楽 | 大間々昂 |
| 配給 | ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野 |
第73回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門でも、正式上映されました。宣伝文句には「仕掛けられた3度の衝撃」という言葉が入っています。
主なキャスト
| 役 | キャスト | 人物 |
|---|---|---|
| 田中武志 | 妻夫木聡 | 週刊誌の記者 |
| 田中光子 | 満島ひかり | 田中の妹 |
| 田向浩樹 | 小出恵介 | 殺された夫 |
| 田向友希恵 | 松本若菜 | 殺された夫の妻 |
| 宮村淳子 | 臼田あさ美 | 友希恵の大学の同期 |
| 尾形孝之 | 中村倫也 | 淳子の恋人だった男性 |
| 稲村恵美 | 市川由衣 | 大学時代の浩樹と付き合っていた女性 |
| 渡辺正人 | 眞島秀和 | 浩樹の会社の同僚 |
ほかに、濱田マリが橘美紗子を、平田満が杉田茂夫を演じています。
映画の配信と原作小説の読み方
映画はU-NEXTの見放題で、原作小説は創元推理文庫で楽しめます(2026年11月時点)。
映画を見るならU-NEXT
U-NEXTでは、『愚行録』が見放題で配信されています(2026年11月時点)。
原作小説は創元推理文庫と電子版
原作小説は、2006年3月に東京創元社から単行本で出ました。創元推理文庫版は2009年4月17日が初版で、306ページです。
原作小説は創元推理文庫で読めます。
定価は770円(2026年11月時点)で、電子版もあります。なお、漫画化された作品は見つかりませんでした。
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愚行録に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 田向一家を殺した犯人は誰ですか?
A. 小説も映画も、犯人は田中光子です。映画の主人公の田中武志の妹にあたります。
Q2. 光子の子の父親は誰ですか?
A. 映画では、兄の武志と示されます。小説は、最後の光子の言葉をそのまま受け取れば、兄との子と読めます。
Q3. 『愚行録』の最後はどうなりますか?
A. 映画は、田中がバスで妊婦に席を譲る場面で終わります。小説は、光子が語りかけていた「お兄ちゃん」が取材者だと分かって終わります。
Q4. 原作と映画の違いは何ですか?
A. 小説の取材者は最後に光子の兄と分かり、映画の田中は最初から兄として登場します。殺される一家も、小説は4人、映画は夫・妻・一人娘の3人です。
Q5. 映画『愚行録』はどこで見られますか?
A. 2026年11月時点では、U-NEXTの見放題で見られます。
まとめ:愚行録のネタバレと結末
『愚行録』は、語られる一家の裏側から、語る人の愚かさまで見せる物語です。
- 犯人は小説も映画も田中光子
- 取材の目的は、光子の犯行に気づいた人の口封じ
- 映画の田中は宮村を殺し、現場に尾形の吸い殻を残す
- 映画では、千尋の父親は兄の武志と示される
- 映画のラストは、田中がバスで妊婦に席を譲る場面
- 小説のラストは、「お兄ちゃん」が取材者と分かる場面

