呪術廻戦 18 (ジャンプコミックス)
呪術廻戦の物語において、渋谷事変の直後から幕を開けた「死滅回遊(しめつかいゆう)」編。これまでの呪霊対術師というシンプルな構図から一変し、複雑怪奇なルールと多数のプレイヤーが入り乱れる展開に、読むのを一度止めてしまったという方もいるのではないでしょうか。私自身、最初に読んだときは「泳者(プレイヤー)」や「総則(ルール)」といった新しい単語の羅列に頭が追いつかず、何度もページをめくり返した記憶があります。しかし、この儀式の仕組みと羂索(けんじゃく)の真意を理解すると、この章が物語にとっていかに重要な転換点であるかが見えてきます。
記事のポイント
- 死滅回遊の複雑なルール体系と儀式としての本質
- 羂索が日本全土を使った実験で目指した「同化」の正体
- 乙骨や秤など主要キャラクターの結界内での激闘
- 物語の結末に向けた伏線と生存者たちの現在
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呪術廻戦の死滅回遊とは?仕組みを解説

\呪術廻戦を読んでみよう/
死滅回遊は、単なるバトルロイヤルではありません。それは日本全土を巻き込んだ、呪力による人類の強制進化プログラムとも言える壮大な儀式です。まずは、その根幹をなすシステムから紐解いていきましょう。
死滅回遊のルールをわかりやすく解説
この儀式の進行管理は、式神である「コガネ」が行っています。参加者はコガネを通じて管理者(ゲームマスター)と交信し、ルールの確認やポイントの精算を行います。初期に設定されていた「総則(ルール)」の中でも、特に術師たちを苦しめたのが以下の制約です。
死に直結する「19日ルール」
覚醒した術師は、術式覚醒後19日以内に任意の結界で参加を宣誓しなければなりません。これを怠ると「術式の剥奪」が行われます。この「剥奪」は単に能力がなくなるだけでなく、術式が刻まれた脳自体に干渉されるため、事実上の死を意味します。
殺し合いを強制するポイントシステム
さらに凶悪なのが、「他者の生命を絶つことで点を得る」というルールと、「得点の変動が19日以内に見られない場合は術式剥奪」というルールの組み合わせです。
羂索が死滅回遊を行う真の目的
黒幕である羂索(けんじゃく)の目的は、日本中の人間を彼岸(ひがん)へと渡し、不死の術師「天元」と人類を「超重複同化」させることにあります。
羂索は1000年以上前から、呪力の可能性を追求してきました。彼は「呪力の最適化」ではなく、制御不能なカオスが生み出す新しい形を見たがっています。死滅回遊は、その同化に必要な莫大なエネルギーを日本列島という「器」に充填するための儀式であり、参加者同士が潰し合うことで発生する呪力を吸い上げる「慣らし」のプロセスなのです。
日本全土に展開された結界の構造
死滅回遊の舞台となるのは、北海道を除く日本各地に設置された10の「結界(コロニー)」です。東京、仙台、桜島など主要な都市が巨大な結界に覆われました。
これらの結界は、黒いラインで結ばれることで日本列島を横断し、現世から切り離された異界を作り出しています。この構造こそが、集めた呪力を彼岸へ送るための送電線のような役割を果たしているのです。
結界への侵入は自由ですが、出ることは初期ルールでは不可能です。一度足を踏み入れれば、そこは法も秩序も存在しない無法地帯となります。
点の獲得条件とルールの追加変遷
この絶望的なゲームにおける唯一の希望は、貯めたポイントを100点消費することで「管理者と交渉し、総則(ルール)を1つ追加できる」というシステムでした。虎杖たちはこのシステムを利用し、殺し合いを回避するための抜け道を作ろうと奔走します。
主なルール変更の変遷は以下の通りです。
| 追加者 | 追加ルール内容 | 戦略的意義 |
|---|---|---|
| 日車寛見 | 全泳者の情報の開示 | 特定人物の居場所や所持ポイントの把握が可能になり、索敵効率が向上。 |
| 日車寛見 | 泳者間での得点の譲渡 | 敵を殺害せずともポイントを移動できるようになり、不殺での攻略が可能に。 |
| 羂索 | 新規参加の打ち切りと終了条件 | ゲームを強制的に終わらせるための最終手段。 |
特に重要だったのが、日車による「得点の譲渡」の実装です。これにより、虎杖たちは敵対した術師を倒したあと、殺さずにポイントだけを受け取って「死滅回遊からの離脱(19日ルールの回避)」を促すことができるようになりました。
呪術廻戦の死滅回遊における戦いと結末

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死滅回遊編の醍醐味は、なんといっても各コロニーで繰り広げられた異種格闘技戦のようなバトルです。ここでは主要な戦場となったエリアごとの激戦を振り返ります。
死滅回遊の主要な参加者と能力
参加者は大きく分けて「現代の術師」と「受肉した過去の術師」の2パターンが存在します。
- 虎杖悠仁:宿儺の器としての身体能力に加え、真人戦を経て精神的にも成長。部品のようにただ「呪いを祓う」存在としての覚悟を決めています。
- 日車寛見:天才的な法曹関係者。術式覚醒からわずか12日で一級術師レベルに到達した異才。領域展開「誅伏賜死(ちゅうぶくしし)」で相手の罪を裁きます。
- 鹿紫雲一:400年前の最強クラスの術師。電気の性質を持つ呪力を操り、宿儺との対戦だけを求めて現代に蘇りました。
- 禪院真希:天与呪縛により呪力を完全に捨て去り、伏黒甚爾(トウジ)と同等の身体能力を獲得。「桜島結界」での戦いを経て、真の鬼人へと覚醒しました。
各コロニーでの激戦と勝敗の行方
数ある戦いの中でも、読者の度肝を抜いたのが以下の2つの戦いです。
仙台結界:特級・乙骨憂太の無双劇
仙台では、4人の実力者が互いに牽制し合う「四つ巴」の状態が続いていました。そこに投入された乙骨憂太は、ドルゥヴ、黒沐死、烏鷲亨子、石流龍という災害級の敵を相手に連戦。特筆すべきは、乙骨、烏鷲、石流の3人が同時に領域展開を発動したシーンです。結界が干渉し合い崩壊するというカオスな展開の中、乙骨は圧倒的な呪力総量と「模倣(コピー)」の術式で場を制圧しました。
東京第2結界:不死身のギャンブラー秤金次
秤金次は、最強の戦闘狂である鹿紫雲一と対峙しました。秤の領域展開「坐殺博徒」は、パチンコの大当たりを引き続ける限り、無制限の呪力と自動回復により「不死身」になるというもの。腕を飛ばされても即座に再生し、音楽に乗って踊りながら戦う秤の姿は、呪術廻戦屈指のエンターテインメント回となりました。
主要キャラの死亡と生存状況まとめ
死滅回遊は多くの犠牲を生みました。特に物語に大きな影を落としたのが以下の出来事です。
| キャラクター | 安否 | 詳細 |
|---|---|---|
| 伏黒津美紀 | 死亡 | 伏黒恵が命懸けで救おうとした姉は、実は最初から「万(ヨロズ)」に受肉されていました。彼女は宿儺によって殺害され、伏黒恵の魂を折るための決定打となりました。 |
| 九十九由基 | 死亡 | 天元の護衛として羂索と交戦。自らをブラックホール化させる捨て身の攻撃を放つも、羂索の隠し持っていた術式により無効化され敗北しました。 |
ラスボス羂索の暗躍と天元の陥落
各地で激戦が続く裏で、羂索は着実に計画を進めていました。彼はアメリカ等の国家首脳に接触し、呪術師をエネルギー資源として売り込むことで軍隊をコロニーに誘導。呪霊に襲われる兵士たちの断末魔から膨大な呪力を抽出しました。
そして、手薄になった薨星宮(こうせいきゅう)を襲撃し、天元を「呪霊操術」の支配下に置くことに成功。これにより、人類との同化の準備プロセスが完了してしまったのです。
死滅回遊の終了条件とその後
天元を手に入れた羂索は、もはや不要となった死滅回遊を終わらせるため、コガネの論理矛盾を突いて強引なルール追加を行いました。
このルール追加は、実質的に「主人公たち全員への死刑宣告」です。彼らが生き残るためには、ラスボスである宿儺と羂索を倒す以外に道がなくなりました。
呪術廻戦の死滅回遊が描く呪術の進化
死滅回遊編は、平和な時代に生きてきた現代の術師たちを、平安時代さながらの「蠱毒(こどく)」の中に放り込む装置でした。極限状態での殺し合いを経て、虎杖や真希、乙骨たちはかつてないほど強大になりましたが、同時に多くの大切なものを失いました。
現在連載中の「人外魔境新宿決戦」は、この死滅回遊で生き残った精鋭たちが、全ての決着をつけるために宿儺に挑む最終戦争です。複雑に絡み合った因縁がどのような結末を迎えるのか、最後まで見届けましょう。
もし、これまでのストーリーや伏線をもう一度確認したい場合は、電子書籍でまとめて読むのが効率的です。




